【メディアトリガーplus(試聴無料)】映画「セバスチャン・サルガド_地球へのラブレター」(ジュリアーノ・リベイロ・サルガド、ヴィム・ヴェンダース共同監督)。8月1日公開(提供写真)。(C)Sebastiao_Salgado、(C)Donata_Wenders、(C)Sara_Rangel、(C)Juliano_Ribeiro_Salgado【拡大】
南米の鉱山で金を掘り当てようと命をかける労働者たち、エチオピアの難民キャンプでの母と子たち、旧ユーゴスラビアでの隣人同士の大量殺戮(さつりく)、コンゴでのツチ族とフツ族の殺し合い-など、人類が「今」抱えるあらゆる矛盾と不幸を撮り続けたセバスチャン・サルガドは魂を病むまで苦しみ、息子であるジュリアーノはそんな父を見つめてきた。そして2人をヴェンダースの視線が包む。愛と敬意と慈しみに満ちた視線が幾重にも重なり絡み合う本作品に、殺戮を重ねてきた人類の歴史を赤裸々に見せつけられ打ちのめされそうになるが、またそこから再生するための道を教えてくれる。
違う価値観で見る勇気
「社会派」と言われた写真家が、大自然の中で生き続ける動物たちを追い始めながらもそれを逃げ道とせず、自然を破壊してきた人類の新しい歩むべき道を示すに至る。ちっぽけな存在であるはずの1人の人間が、1組の夫婦が、1つの家族が、これほどまでの奇跡を起こせるのかと胸が熱くなった。セバスチャン・サルガドはもう人の名前にとどまらない。それは生き方であり、崇高な理念の名称になったとさえ思わせてくれる。