「内田正泰記念アートギャラリー」は江ノ島電鉄の長谷駅から歩いてわずか1分。すぐそばには踏切もあり、まるで内田さんがはり絵で描く世界のようなのどかな光景が広がる=2015年7月14日、神奈川県鎌倉市長谷(田中幸美撮影)【拡大】
ほぼ毎日午前5時半に起床、そのまま海まで散歩したり、近くの寺に行ったりするという。生活信条は、「歩く、考える、食べ過ぎない」こと。
「生きて、指が動いて、気持ちがある限り、誰もしないことをやりたい」と、今も創作意欲は衰えることがない。葛飾北斎や歌川広重などの浮世絵画家を引き合いに出し、「追いつきたい」と話す。その一方で、「観光にこびるような作品は作りたくない。自然と一緒に住んでいるという空気を感じて作っていきたい」とも。
その背景には自身の戦争体験がある。海軍航空隊に召集されたが体をこわして戦地へ赴かずに終戦を迎えた。隊の仲間同士がサーベルを手に争っているのを目の当たりにして、自らの日記に「内部で争いをしているようなものが外敵に勝てるわけがない」と書き込んだ。それを上官に見つかり、こっぴどく殴られた。「死ぬかもしれない」。薄れゆく意識の中で「命が残っているならこの世に残るものを作りたい」と切に思った。