許されぬ「ご都合主義」
一方で、基軸通貨国となるには、「自由な資本移動」が必要条件となる。透明性が高まる分だけ、金融競争力が高まり、海外勢が自国通貨を使う。海外勢に国内企業が買収され、不採算事業があぶり出される面もあるが、この痛みは「金融覇権」のコストである。
米ドルの金兌換(だかん)を停止した1970年代以降、米国は、この「連立方程式」をうまく解いてきた。景気対策に必要な「独立した金融政策」を保持する一方で、米ドル本位制を守るために、「自由な資本移動」を徹底。代わりに、「固定相場制」を捨てて変動相場制を選んだ。
米国を見習った中国は2005年に固定相場制を廃止。変動率を定めつつも人民元の対ドル基準値を市場実勢に任せ、人民元の国際化、将来的な基軸通貨化を目指した。以来、人民元は対ドルで3割以上も上昇する場面があり、国際通貨基金(IMF)は今年4月に「人民元は経済実勢に近い」と太鼓判を押した。