井浦新_下鴨神社写真展「御生_Miare」の会場となる神服殿(しんぷくでん)。御神服を奉製する御殿であったことから、厳かな雰囲気が漂い、御簾を上げると展示写真を垣間見ることができた=2015年6月19日、京都市左京区の賀茂御祖神社(下鴨神社、田中幸美撮影)【拡大】
≪魂が蘇ってくる感覚 「御生」そのもの≫
井浦新(いうら・あらた)さんと下鴨神社との関わりは十数年前に遡(さかのぼ)る。当時からカメラ片手に糺(ただす)の森を真夜中に一人で訪れ、「闇の中で何かが写るかもしれない」と長時間露光で写真を撮ったり、朝日を待ちながら過ごすのが好きだった。「おどろおどろしい恐怖というより、闇の中の清らかさやある種の畏怖を感じた」といい、京都を訪れた際には頻繁に足を運んだ。
一昨年の葵祭で、下鴨神社の「社頭の儀」に参列者代表として拝礼。それをきっかけに、新木直人宮司から許可を得て、式年遷宮までのさまざまな神事を撮影するようになった。
2年にわたる撮影の中で強く興味をひかれた神事がある。5月15日の葵祭の3日前に行われる前儀の一つ、「御蔭祭(みかげまつり)」だ。比叡山麓に位置する御蔭山に立つ御蔭神社まで、ご祭神である賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)と玉依媛命(たまよりひめのみこと)の「荒御魂(あらみたま)」を迎えに行き下鴨神社へと連れ帰る儀式だ。荒御魂は下鴨神社の和御魂(にぎみたま)と合体して再生、神威を新たにする。それを「御生(みあれ)」と呼ぶ。御蔭祭は古くは御生神事と呼ばれていた。