冠水したままの道路を歩く人たち=2015年9月13日午前、茨城県常総市(共同)【拡大】
≪「生きているだけで十分」 盲目の女性に笑顔≫
鬼怒川の堤防決壊で、迫りくる濁流の音におびえながら自衛隊のヘリコプターに救出された盲目の女性がいる。避難所に持ってきたラジオは電波が入らず、状況を知るには周囲の会話に耳を澄ますしかない。寄り添う夫も弱視で、手足に障害がある。不便な生活を強いられながらも「生きているだけで十分」と笑顔を絶やさない。
迫る濁流の音、増す恐怖
女性は茨城県常総市三坂町の斉藤純子さん(61)。先天性の網膜色素変性症で、19歳で指圧師の資格を取ったが33歳の時に視力をほぼ失った。その5年後、点字などの訓練をする支援センターで知り合った夫、哲雄さん(66)と結婚した。
ゴーッ。10日昼すぎ、降り続く雨とは明らかに違う音がした。「洪水だ」。直後に夫の声がして、2階に逃げる。「(水が)床下まで」「階段も」。様子を尋ねるたびに状況は悪化していった。
間もなくヘリの音が聞こえた。哲雄さんは歩くときに使う白杖にTシャツを巻き付け、窓から無我夢中で振った。他の人が救出されるたびに音が遠ざかる。「気付いていないのか」。恐怖は増したが、諦めなかった。