法要の始まる午後6時頃から大本堂に人々が集まる。午後7時前、法要が終わる頃になると堂内は立錐(りっすい)の余地もないほど人で埋まり、法要の行われていた内陣にも人が入った。
大本堂の梁(はり)からつるされた仮設台に僧侶らが昇ると、準備は整った。
火打ち、一本締めに続き「南無妙法蓮華経」のお題目を全員で3回唱えると仮設台から一斉にぼたもちがまかれる。堂内を埋め尽くした人々は歓声を上げながら手を伸ばし、ぼたもちを獲得しようと必死だ。帽子を差し出し、袋を広げ、足元に落ちたのを拾う者など熱気は一瞬でピークに達する。
「難除(よ)けぼたもち」と言われ、食べるとさまざまな災難から逃れることができるとされているからだ。
日蓮上人が生きた時代は、元寇や天変地異による飢饉(ききん)など内憂外患に悩まされていた。現代の私たちを取り巻く状況も実は、それほど大きく変わっているわけではないのかもしれない。
黒ゴマのぼたもちはビニールに包装され、開けて食べてみると味は…甘みがない。が、今を生きるありがたさをよくかみしめた。(写真・文:写真報道局 渡辺照明/SANKEI EXPRESS)