デビュー作で主演も務めたロシア映画「草原の実験」(アレクサンドル・コット監督)には一切せりふがない。役者には撮影シーンをイメージした描画が渡されただけだから、表現の手段といえば、表情の微妙な変化やさりげないしぐさぐらいしかなかっただろう。撮影当時まだ14歳、演技の経験すらなかったエレーナ・アン(17)はSANKEI EXPRESSの取材に「私にできることは監督の指示を忠実に実行することぐらいでした。カメラの前ではいつも緊張していました」と振り返り、苦笑いを浮かべた。
女優には興味がなくて…
苦心に苦心を重ねてできた本作は、旧ソ連のカザフスタンで実際に起きた事件に着想を得た社会派作品。カザフスタンを想起させる広大な草原地帯にぽつんと建つ小さな家で暮らす父親と美しい少女(エレーナ・アン)、さらに彼女に恋心を寄せる青年2人のそれぞれ穏やかな日常生活が、圧倒的な映像美とともに切り取られている。だが彼らの幸せな日々もそう長くは続かず…。