【KEY BOOK】「三絃の誘惑」(樋口覚著/人文書院、3132円)
「ふるさとのしんむらさきの節恋しかの歌沢の師匠も恋し」。九鬼周造が遊学先のパリで歌沢を偲んで詠んだ一首だ。明治の文人たちは兆民・露伴・鴎外・漱石・鏡花をはじめ、大半が清元・小唄・義太夫・新内・歌沢などにぞっこんだった。本書はその明治の三絃の音に誘惑された文人たちの好みと精神性と時代背景を描いて、まことに申し分ない。日本人が三絃のどこに痺れるのかもわかる。同じ著者の『「の」の音幻論』とともに詠まれるといい。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS)
■まつおか・せいごう 編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。2014年から本條秀太郎氏と日本の音色を堪能するイベント「三味三昧」を開催。趣向を凝らした格別な演目・室礼・食事で好評を博している。第5回は11月19日(木)19:00から。近日、申込受付開始。「松岡正剛千夜千冊」(http://1000ya.isis.ne.jp/)