自縄自縛という言葉がこれほどピッタリ当てはまる事例も少ないのではないか。今月初旬の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)合意で日本が米国と豪州との間でコメの輸入枠を新たに設定したことである。
日本の国会はTPP交渉を開始する直前の2013年4月に、コメなどの重要農産物は関税撤廃の除外とすることを決議しており、今回、その決議に沿った形で1キロ341円の現行関税を死守したというわけである。当時、既得権益維持に懸命な農協と、票田確保にきゅうきゅうとする農林族議員らが躍起になって決議を主導した。
しかし、今回新たな輸入枠を設けたことで、おいしいコメを作ろうという農家の意欲と生産性向上への努力に冷水をかけてしまったことを国会議員らは認識しなくてはならないだろう。
今回の合意内容では米国に対し当初5万トン、豪州には6000トンの輸入枠を設け、13年目以降それぞれ7万トン、8400トンまで拡大する。