日本にはすでに1995年から義務的に輸入している外国産米が年間77万トンある。「一粒たりともコメは入れない」との旗印の下で86年から93年まで繰り広げられた多角的貿易自由化交渉(ウルグアイラウンド)の結果である。そして今回さらに義務輸入量が上乗せされるのだ。
強制輸入米は市場を通さないため味や品質に関係なく買わねばならない。そのため、ほとんどが飼料用にまわる。発生した売買差損2700億円は国の財政負担となった。
また、ウルグアイラウンドでは6兆円の農業補助金を投入した揚げ句、稲作の衰退を加速させた。
今回のTPP交渉ではそうした教訓が生かされず、コメの聖域化に固執し、交渉の選択肢を狭めてしまった。新潟などの先進県はTPPを機に、田んぼの貸借と集約化を活発化させて生産性を上げ、輸出攻勢に打って出ようとしている。JA全中の奥野長衛会長はTPP合意を受けて「生産者の将来不安を早急に払拭すべきだ」と国への対策を求めていたが、自らの無策を告白しているようでむなしい。(気仙英郎/SANKEI EXPRESS)