≪伝統に培われた技を新しい発想に生かすと「ものづくり」の可能性が広がる≫
10月、秋晴れの日本橋にお猪口(ちょこ)を片手に飲み歩きをする人々の楽しげな姿があふれました。最近ではさまざまな場所で開催される日本酒イベントの一つ「第3回日本橋エリア日本酒利き歩き2015秋」は、東海道の始点としても名高い日本橋地区に全国から30蔵が集まり、地域の飲食店とのコラボレーション。人々の期待はいやが応でも高まります。
今回はその参加蔵の一つであり日本でも数少ない400年の歴史を誇る小嶋総本店の小嶋健市郎(こじま・けんいちろう)さんを山形県米沢市に訪ねました。
日本三大急流の一つ最上川の源、自然豊かな山に囲まれた盆地にある米沢市。江戸時代には、上杉15万石の瀟洒(しょうしゃ)な城下町として栄えました。この地に400年以上の歴史を刻むのが「東光」の名で知られる小嶋総本店。自然の力にあらがえず飢饉(ききん)があるたびに「禁酒令」が出されていた江戸時代にあり、米沢藩上杉家御用達酒屋として酒造りを許されていた数少ない造り酒屋です。「東光」の名は米沢城の東、日の昇るところの酒であることを示しています。心を込めた酒造りとともに、みちのくの酒造りの文化を伝承していくために、1984年、古い酒蔵を原形のまま復元した酒造資料館「東光の酒蔵」をオープン。