同様の事件続く恐れも
今回の衝突の背景には、クルド人とトルコ人の対立、トルコのエルドアン大統領派と反大統領派の対立など複合要因があるが、主原因はクルド人とトルコ人の対立にあり、トルコでの民族対立が日本でイメージ拡大して起きた「遠距離ナショナリズム」現象である。
トルコ政府はシリアとイラクで、「イスラム国」の拠点に加え、トルコからの分離独立を掲げる「クルディスタン労働者党」の拠点を空爆ししている。エルドアン政権の対クルド政策に日本を含む全世界に在住するクルド人が憤慨している。
これに対して、トルコ本国に住む人だけでなく、全世界のトルコ人が、クルド人によるクルディスタン国家の建設を警戒している。クルディスタンが建国されるならば、トルコ領の一部が切り離され、領土保全が崩されるからだ。
日本でクルド人とトルコ人が生活していても何の問題もないが、トルコで実際に起きている民族対立が、イメージによって「遠距離ナショナリズム」が刺激され、今回の事態に発展した。エルドアン派対反エルドアン派という政治対立ではなく、構造的な問題である民族対立であるため、今後も日本で同様の事態が続き、民族同士による殺傷事件に発展する可能性も排除されない。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)