群馬大病院で患者が相次いで死亡した問題を受け、設置された大学の医療事故調査委員会の会合。10月以降の調査制度では現場に戸惑いもみられる=2015年9月22日、群馬県前橋市(大橋拓史撮影)【拡大】
厚生労働省によると、患者が死亡した医療機関の管理者は、報告をするか否かの判断をセンターや支援団体に相談できる。だが、日本医師会や各病院団体はいずれも支援団体に指定されており、どこに相談するかで「医療事故」の範囲が変わる可能性がある。岩手県立軽米病院の葛西敏史副院長は「複数あるガイドラインや支援団体のうち、自分に合うものを選べばよいのだろうか。管理者に判断を丸投げでは困る」と悩む。
センターには10月以降、多いときで1日約20件の問い合わせがあったという。厚労省は近く、開始1カ月間のセンターへの報告数や相談件数を発表する方針。日本医師会の松原副会長は「制度が根付いていくうち、何が報告事例に当たるか収斂(しゅうれん)されていく」とみるが、現場の当惑は続きそうだ。
遺族側の意見反映を
「医療過誤原告の会」会長の宮脇正和さん(65)の話「制度の入り口部分での認識の相違は懸念されていた課題の一つだったが、早くも表面化している。遺族側の意見を受け付けなければ、年間1300~2000件と推計される『予期せぬ死亡事故』に対し、報告件数が極端に少なくなることも予想される。情報やプロセスを共有し、公正性・透明性を担保した制度にしてほしい」(伊藤弘一郎、道丸摩耶/SANKEI EXPRESS)