姿が見えないまま、ひたひたと迫りくるぼぎわんの存在は、鳥肌が立つほどに不気味だ。「これを書くにあたって考えたのは、『お化けって何が怖いんだろう?』ということです。姿形やまがまがしい性格ではなく、幾世代にもわたって伝えられ、人々に畏れられていること自体が怖いのではないか。今回は、そこを徹底して書こうと。正体は分からないけれど、名前だけは伝わっていて、じいちゃんもばあちゃんもびびっている、という」
同じ土俵に立って
こだわったのは「怖さ」。「最近は『人間が一番怖い』という風潮があるけれど、カチンと来てしまうんです(笑)。そりゃあそうかもしれないけれど、1位タイで怖いものいっぱいあるぞ、と。犬に追いかけられても怖いじゃないですか(笑)。『怖い』って、そのものではなくて、シチュエーションだと思うんです。先人たちの作品から学んだのは、奇妙なできごとをきっかけとして、それにともなう語る人のリアクションを丁寧に書くこと。『怖い』から怖いのではなく、『怖がっている』から怖いのではないでしょうか」
そんな正統派の恐怖に加え、夫婦間の育児への認識のズレや、不妊といった現代的なテーマも盛り込んだ。「今回は話者が各章ごとに変わるので、視点をひっくり返すことで驚きが生まれるものを考えたんです。育児も子供に対する考えも、立場が変われば全く違う見え方になるので」