この場所には、残飯から動物の死骸、鋭いガラス片などダッカ市内の全てのゴミが運ばれてくる。小さな足が傷つくのも日常茶飯事で、この日もモスミは足を切り、血を流していた。傷からの感染症がもとで命を落とす子供も多いという。
大人の男たちが我先にと売れるゴミを探す脇で、何十台ものショベルカーが同時に作業している。「巻き込まれる人も多い。でも、ここでは誰もそんなこと気にしない」
ゴミ山で働く人は「汚い仕事をする者」として差別される。弱い立場におかれた女性や子供が、ここで暴行や誘拐などの犠牲になることも少なくない。そんな危険な場所で、モスミは毎日1人で働いている。
本当に1人で怖くないのだろうか。いや。怖いと感じてしまったら、ここで生きられないのかもしれない。
≪たとえ小さくても確かな光を届ける≫
ゴミ山で誰かにひどく扱われないか、裸足の足は大丈夫か、彼女の命の危うさを心配しながら、自分だけ快適なホテルに戻ることを後ろめたく感じた。「とにかく、生き延びて」。祈るような気持ちで、眠れぬ夜を過ごした。