NHKの「クローズアップ現代」のやらせ疑惑について会見する、放送界の自主組織「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会メンバー=2015年11月6日、東京都千代田区(野村成次撮影)【拡大】
【メディアと社会】
昨年5月14日に放送されたNHKの報道番組「クローズアップ現代」(以下、クロ現)のやらせ疑惑が、いまだに尾を引いている。籾井勝人(もみい・かつと)会長は繰り返し謝罪し、NHKが自民党の求めに応じて経緯の説明に出向いたことに対し政治の圧力に屈したとの批判が出ていることには、「求められればどこへも説明に行く」などと釈明している。ただ、問題の本質は、番組の公益性を確保するにはどうすれいいかということなのに、現実にはNHKのドキュメンタリー制作現場では萎縮ムードが拡大している。
この番組は「追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」と題し、寺で得度(出家の儀式)をすれば戸籍上も法名に変更できる制度を悪用し、宗教法人と結託し多重債務逃れや融資を受ける詐欺を取り上げた。本欄(今年4月15日付)でも「やらせ」と「演出」の違いを中心にすでに取り上げたように、放送界の自主組織「放送倫理・番組向上機構(BPO)」も、「番組に重大な放送倫理違反があった」と指摘した。