藤田は寺山作品の演出を打診され、「書を捨てよ」を選んだ。主演は村上の写真を見て目力の強さで決めたという。「僕が画家だろうとフリーターだろうと起用したと言われました」。藤田の舞台には独特の空間作りがあり、その中の「コマとしてやっている部分がある。結果としてよく見えればいい」と話す。
両親は「反面教師」
寺山には母のミュージシャン、UAの思い入れが強いといい、出演が決まった際「『カルマ(業)やな』といわれた」と笑う。寺山については「こういう考え方もあるのかと驚いた。すごい人だったと思う」。映画版を見て「社会に貢献したいと思いつつも、反抗してちゃかしているよう。反抗心が強いところは僕も藤田さんも似ている」と話す。
藤田は映画のスクリーンを一枚のフィルターにすぎないととらえ、舞台を対称的な立体空間として、幾層にも重なった深みを出す意向という。退廃的で鬱屈した青年を表現するため、村上にはあえて舞台用の発声や大きな動きを求めていない。「自然にせりふを言い続けて僕自身が舞台の上で変化していけばいいと」。表現一つ一つに深い意味があり、「目をこらして引き寄せられる舞台になる」。