民間の所得を政府が税によって取り上げたまま、支出を通じて民間に資金を還元しない状態を続けると民間の需要を圧縮することになる。好景気で民間需要が旺盛で、インフレ率が上がる状態だと、財政支出を引き締めるのは理にかなっている。ところが、「20年デフレ」の日本にとって緊縮財政は不合理のはずである。
13年度は金融の異次元緩和効果で景気が上昇軌道に乗り、円安と株高効果で企業収益は大きく増え、消費者心理も改善したのだが、14年度は消費税率8%への引き上げで、家計消費が押さえ込まれ、デフレ圧力が再燃した。にもかかわらず、政府が財政支出をほとんど増やさず、税収を増やすと、民間需要が落ち込む。14年度の実質経済成長率がマイナスに落ち込み、さらに15年度も4~6月期がマイナス、7~9月期は改定値が何とかプラスになったが、10~12月期の足取りは重い。原因はまさに緊縮財政である。
日銀は異次元金融政策を堅持しているし、場合によっては追加緩和に踏み切るとの期待が、株式市場関係者などに多い。この緩和策は日銀が民間金融機関保有の国債を買い上げて、日銀資金を年間80兆円程度新規供給するのだが、国際通貨基金(IMF)は民間の売却可能な国債保有額は約220兆円で、今後2、3年以内に日銀政策は限界にくるというリポートをまとめている。金融緩和偏重のアベノミクスは持続不可能なのだ。