しかし、そんな私の心を変化させてくれたのは、指導者の存在だった。私が小学6年生に上がる頃、陸上トレーニングをしているときに、「山梨は田舎だ。無い物も沢山ある。でも無い物ねだりをするな」と。当時、私が陸上トレーニングなどで使用していた用具は、ほとんど指導者の手作りだった。自転車のタイヤに入っているチューブをつなぎ合わせたストローク強化の用具を始め、布を縫い合わせ袋に砂を詰めて作った重り、ペットボトルに水や砂を入れた手作りダンベルなど…。手作りのトレーニング用具は紹介できないほどだ。用具を作る指導者は、「無い物ねだりをするな。あるもので勝負するんだ。自分で考えて工夫するんだ」と熱く語り、「この環境で強くなれたら、本物だ。タフになれるぞ」と背中を押してくれた。
全ては気持ち次第
田舎でも強く速くなれるんだ、と心に決めてからは、一度も無い物ねだりをしたことはない。逆に、この環境で絶対に強くなるんだとハングリーになれた。大都市の素晴らしい環境で開かれる全国大会でも、「こんな大きなプールで、ちゃんと泳げるかな?」と不安になったり、気負ったりすることなく、「最高の環境だから、絶対にベストタイムが出る!」なんて前向きに考えられるようにもなった。こんな話を今、悩んでいる地方のアスリートに向けて話すこともある。