英国の独立調査委員会が元ロシア連邦保安庁(FSB)のアレクサンドル・リトビネンコ元中佐毒殺に関し、ウラジーミル・プーチン大統領が殺害に関与した可能性が高いと結論づけたことを受け、報告書を手に記者会見する元中佐の妻、マリーナさん=2016年1月21日、英国・首都ロンドン(AP)【拡大】
英露関係が急速に冷え込みそうだ。21日、英国の独立調査委員会が、ロシア連邦保安庁(FSB)のリトビネンコ元中佐(当時43歳、英国国籍)が、2006年11月、ロンドンで猛毒の放射性物質ポロニウムによって暗殺された事件にロシアのプーチン大統領が関与していた可能性があるとの報告書を発表したからだ。
<300ページに及ぶ報告書では、(1)リトビネンコ氏とホテルで会い、事件後ロシアに帰国した旧ソ連国家保安委員会(KGB)職員ら2人が、殺害する目的で茶にポロニウムを入れて暗殺した(2)2人には個人的にリトビネンコ氏を殺害する目的はなかった(3)殺害はかなり高い可能性でFSBの指示で行われた(4)ロシアは2人の身柄の引き渡しを拒否しており、FSBの暗殺は恐らくパトルシェフ安全保障会議書記とプーチン大統領が承認していた、と結論づけた。
またサセックス大学のドムベイ教授の研究では、ポロニウムは核兵器を製造するロシア国内の2つの閉鎖都市でしか製造されておらず、04年にもチェチェンの反体制指導者などが毒殺されており、ポロニウムを使用できるロシア政府が国家として殺害に関わった可能性が高いとしている。
殺害の動機としては、プーチン氏が権力を掌握する契機となった1999年のモスクワのアパート爆破事件がFSBの自作自演であったことなど、プーチン氏の「アキレス腱(けん)」を明らかにしたのがリトビネンコ氏だったことを挙げた。>(1月21日「産経ニュース」)