英国の独立調査委員会が元ロシア連邦保安庁(FSB)のアレクサンドル・リトビネンコ元中佐毒殺に関し、ウラジーミル・プーチン大統領が殺害に関与した可能性が高いと結論づけたことを受け、報告書を手に記者会見する元中佐の妻、マリーナさん=2016年1月21日、英国・首都ロンドン(AP)【拡大】
対テロ協力に悪影響
英国検察庁は、07年5月にロンドンでリトビネンコ氏と接触した旧ソ連国家保安委員会(KGB)元職員の実業家、ルゴボイ容疑者の犯行と断定し、ロシア政府に同容疑者の身柄引き渡しを要求したが、ロシア政府は引き渡しを拒否した。今回の独立委員会の調査を受けて、英政府は再度、ロシア政府に同容疑者の引き渡しを要求するであろうが、ロシアが要求に応じる可能性は皆無だ。ルゴボイ氏は、現在、ロシアの右翼政党「自由民主党」に所属する国家院(下院)議員だ。ルゴボイ氏は、21日、ロシアのインタファクス通信に対して「私への容疑は笑止千万なものだ。調査結果なるものは、英国の反露的な立場と、真相を明らかにしたくないという願望を示している」と激しく反発した。
英国独立委員会の発表が真実であるとするとプーチン大統領は「テロリスト」でロシアは「テロリスト国家」ということになる。ロシアは、英国の対応を侮辱と受け止めることは必至だ。英露関係が急速に悪化するとともに、過激派「イスラム国」(IS)に対する対テロ国際協力にも深刻な悪影響を与えることになる。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)