【佐藤優の地球を斬る】信頼醸成サミットで動き出す日露関係 (2/3ページ)

　しかし、サウジアラビアとイランが国交を断絶した後、中東の混乱が一層混迷し、長期化することが確実な状況で、日本はロシアから安定したエネルギー資源の確保するメカニズムを構築しなくてはならない。また、「イスラム国」（ＩＳ）によるテロ対策、北朝鮮の核実験、弾道ミサイル発射に対する対応など、日露間には、調整することが双方の国益に適（かな）う問題がたくさんある。このような問題について日本がロシアと協力することによって、北方領土交渉の環境整備を行うことができる。

　そのために最も効果的なのが、外交の業界用語で言う「信頼醸成サミット」だ。５月上旬に安倍首相がモスクワでなくあえてソチを訪問するのには意味がある。首都モスクワを訪問すると公式訪問に準ずるニュアンスが出るからだ。非公式会談なので、合意文書も作成しない。安倍首相とプーチン大統領が率直な話し合いをすることで、現下の国際情勢の下、日露間でどのような共同作業ができるかについて大枠について口頭で合意する。

国益に適う経済協力