国家は引っ越しできない
フィンランド人の対露感情は決して良くない。戦争に敗れたため、フィンランドは、カレリア地方をソ連に割譲することを余儀なくされた。第二次世界大戦後も、フィンランドは、価値観は自由民主主義で、資本主義体制を取ったにもかかわらず、ソ連との摩擦を引き起こすことを避け、NATO(北大西洋条約機構)に加わらず、中立政策を貫いた。ソ連との貿易経済関係も重視した。
フィンランドにとっても日本にとってもロシアは隣国だ。私たちの生活で、隣人が耐えられないほど嫌な人である場合は、引っ越すという選択肢がある。しかし、国家の場合、引っ越すことはできない。国際法を恣意(しい)的に解釈し、露骨な帝国主義政策を展開するロシアとも、隣国である以上、付き合っていかざるを得ないのである。フィンランドは、ロシアの恐ろしさを熟知している。それだから、プーチン政権とも対話のチャンネルを維持している。ニーニスト大統領が、安倍首相の訪露をサポートするといっている状況を最大限に活用すべきと思う。どのような、論理(ロジック)と修辞(レトリック)がプーチン大統領に対して有効であるか、ニーニスト大統領から助言を求めるべきだ。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)