神宮外苑地区の地区計画【拡大】
文化継承の思想欠落
「問題の本質は日本人が築いてきた文化を継承し発展させていくという思想が欠落している点にある」-景観や緑地などのランドスケープアーキテクトで中央大学の石川幹子教授はそう指摘する。確かに国民の財産である明治神宮外苑を将来にわたってどのように受け継いでいくかが議論されないまま、新国立競技場の計画が進んだとの印象は否めない。
明治神宮は、明治天皇と昭憲皇太后を東京でお祭りしたいとの願いから、国民の寄進や労働奉仕によって創建された神社だ。当時の最先端の学問や英知を集めて造られ、今や内苑の鬱蒼(うっそう)とした森は都内の貴重な緑となっている。東京都元副知事の明治大学・青山●(やすし)教授によると明治神宮は、外苑の野球場やテニスコート、ゴルフ練習場、明治記念館などの収益で維持費が賄われてきたという。
行政も神宮外苑の環境を守るため、1926年に高さ15メートル以上の建物は建てられない風致地区に指定、57年には外苑全体を都市計画公園に位置付けた。槇文彦氏が、新国立競技場について問題提起したのも、90年に完成した東京体育館の設計で風致地区に対応した建築に取り組んだ経験があったからだ。