4月の消費税率引き上げから半年あまり。日本経済の牽引(けんいん)役がいまだに見えてこない。10月の月例経済報告では、個人消費の落ち込みや輸出不振に加え、企業の生産や設備投資の低調さも示された。安倍晋三首相は消費税率を法律通り10%に引き上げるか否か年末に判断するが、再増税へのハードルは上がっている。
内閣府は、景気の基調判断について「緩やかな回復基調が続いている」とし、日銀が20日発表した10月の地域経済報告(さくらリポート)と歩調を合わせた。
ただ、市場関係者の見方は悲観的だ。第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは「景気は数カ月前より悪化した」と指摘。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストも「景気の回復ペースは極めて緩慢」と話す。
深刻なのは消費の冷え込み。8月の家計調査では、1世帯当たりの消費支出は28万2124円で、物価変動を除いた実質は前年同月比4・7%減と5カ月連続の減少となっている。
消費の低迷は企業の生産活動に波及している。8月の鉱工業生産指数は前月比1・9%低下し、在庫指数は4カ月連続で上昇した。自動車や電機業界では積み上がった在庫の調整を急いでおり、SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「生産の調整局面はしばらく続く」とみる。