定例会見で追加緩和につてパネルを使って説明する、日銀の黒田東彦総裁=10月31日午後、東京都中央区の日銀本店(早坂洋祐撮影)【拡大】
午後1時50分ごろ、「日銀の追加緩和決定」の速報が流れると東京株式市場の株価はうなぎ上りで上昇し、日経平均株価はあっという間に1万6000円台を突破した。「景気の回復基調は変わらない」「(物価上昇率が)「1%を割る可能性はない」。これまで強気の発言でデフレ脱却に自信を示し、緩和のそぶりを見せなかった日銀の黒田東彦総裁に市場は完全に裏をかかれた。
■「できること、何でもやる」目標死守へ強い決意
海外メディアが「黒田バズーカ」と評した平成25年4月の大規模金融緩和以降、全く動かなかった黒田日銀が繰り出した“サプライズ緩和”は、市場に景気浮揚の期待感を高めた。だが、緩和を決めた金融政策決定会合後の記者会見で、黒田総裁に「してやったり」の空気はない。
「駆け込み需要の反動や原油価格の下落が長引くとデフレマインドの転換が遅れる可能性もある。そのリスクを未然に防ぎ、物価目標実現のためにできることは何でもやる」。口をついたのは、「2年で2%」の物価上昇目標を死守するという強い決意表明だった。
4月の消費税増税後の長引く個人消費の低迷に、欧州や中国の景気減速が重なり、政府・日銀が当初描いた景気回復・デフレ脱却のシナリオには誤算が生じているためだ。