「マスコミは『断固テロと戦う』という安倍首相を称賛するが、テロの原因は分析しない。イスラム教スンニ派過激組織『イスラム国』(IS)から報復宣言を受けている。こんなテロの脅威は今年1月まではなかったんだよ」
仲居さんが肉を軽く焼いた後、割り下を少し鍋に垂らした。「じゅわじゅわ」といい音が部屋に響く。割り下が泡立ち、肉の一部がぷくっと浮き上がると食べ頃だ。ただ、亀井さんは箸を動かさない。緊張感が部屋を包む。
「安倍首相は1月、訪問先のエジプトで、イスラム国の敵対勢力に2億ドルを無償資金供与すると表明した。首相は当時、日本人2人が人質になっているのを知っていたという。テロリストは『向こうに2億ドル出すなら、こっちにも2億ドル出せ』と要求した末、2人を殺した。今後、日本を敵性国家とみなすと宣言もした。まず、なぜこんな資金供与の話を止められなかったのか」
テロ組織のいいなりになれというのですか。
「日常に潜むテロは実に恐ろしく、撲滅も難しい。私は警察官僚時代、テロやゲリラを摘発する責任者だったが、血眼になって潜伏捜査をしても結局テロは防げなかった。テロは社会不安をあおれるのだから恐ろしい。私が担当した(日本赤軍の)テルアビブ空港乱射事件だってそうだった。こういう危機意識が、今の官邸にあるだろうか」