◆政策の破綻
第3に、増税先送りをするのに財源問題に触れていない。つまり消費税率2%を据え置くために、予定した4兆円超の税収増は望めないのだ。ところが、この財源不足に全然触れずに何ら代わりの財源の裏付けもなく、従来通りに財政健全化、社会保障の充実を図るとしている。これはまさに、政策の整合性の破綻である。そもそも政府の試算では、消費税率を10%に引き上げさらに名目成長率3%程度の高成長が実現しても、財政健全化目標の20年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)は6.5兆円の赤字と見込んでいる。増税先送りをしたいま、財政健全化が可能だとは誰も信じないであろう。また税率引き上げを前提に約1.3兆円を医療・介護などの充実に充てるとしていた看板も下ろしていない。
民進党は増税を先送りする分だけ赤字国債の発行で財源を調達するとしている。その中身は別としても、こちらの方がはるかに筋が通っている。安倍政権は、このままでは財源を示さなかった民主党の二の舞いとなろう。デフレ脱却のために秋には補正予算を編成し景気浮揚を図るとするが、不要だ。増税を先送りする以上、歳出の縮減合理化を打ち出すのが整合性のとれた政策だ。それが責任政党の姿といえよう。
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【プロフィル】石弘光
いし・ひろみつ 1961年一橋大経卒。その後大学院を経て、講師、助教授、教授、学長。専攻は財政学。経済学博士。現在、一橋大学ならびに中国人民大学名誉教授。放送大学学長、政府税制調査会会長などを歴任。79歳。東京都出身。