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「らくらくスマホ」海外攻略なるか 自信の富士通、差別化でじっくり

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「らくらくスマホ」海外攻略なるか 自信の富士通、差別化でじっくり

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大きな文字やアイコンが特徴の富士通の「らくらくスマホ」の操作画面  富士通は6月に初めて海外で携帯電話の売り込みに打って出る。攻略の軸に据えるのは、モバイル機器の操作に不慣れな高齢者など初心者向けのスマートフォン(高機能携帯電話)だ。

 米アップルと韓国のサムスン電子の2社だけで世界の半分を押さえるスマホ市場では、中国メーカーがシェアを伸ばす一方、日本勢の影は薄い。富士通は最先端機種で販売量を増やす「正攻法」ではなく、ターゲットを絞る手法で海外での浸透を目指す。この戦略はモデルケースとなりうるのか。世界進出を試みながら撤退を余儀なくされてきた他の日本勢も注視している。

 明確な差異化で挑む

 電話やメールなどの機能が大きな文字で表示された画面に触れると、タッチパネルなのにボタンを押すような感触が得られる。富士通が海外攻略の先兵に据える「らくらくスマートフォン」は、従来型携帯電話でシリーズ化して以来、国内で2000万台以上を売ったヒット商品の人気機種だ。サービスの一環として設けた専用SNS(交流サイト)「らくらくコミュニティー」の登録者は5万人に迫る。

 「明確な差異化なしに勢いで海外に乗りだすと、大概が失敗していた。競争の激しい最上位機種ではなく、富士通が強みとする『らくらく』で差別化してニーズを開拓する」。携帯電話事業などを統括する大谷信雄執行役員常務は、自信をみせる。

 2月下旬にスペイン・バルセロナで開かれた世界最大の携帯電話の国際見本市で、大谷氏の手応えは確信に変わった。富士通のブースを訪れた通信会社やメディアが、らくらくスマホに高い関心を示したからだ。

 らくらくスマホは、仏大手通信会社のフランステレコムが仏国内で販売する。初心者向けのスマホに絞って提案したところ、関心を示した同社がパートナーに決まった。

 富士通はスマホの海外展開を4年ほど前から模索していたが、壁は高かった。「防水技術を盛り込み、薄型化した主力機種を現地最大手の通信会社に何回も提案したが、海外実績も知名度もないブランドだけに価格の大幅な引き下げを求められた」(大谷氏)。コスト競争力が高くない状況で、原価割れを覚悟する選択は「それでは先がない」(同)と見送らざるを得なかった。

 富士通によると、欧州の携帯電話ユーザーのうち高齢者は1億7000万人にのぼる。スマホへの乗り換えが今後進むとみられ、らくらくスマホは欧州などで支持を広げられると同社はみている。

 販売量こだわらず

 もっとも、スマホの世界市場で日本勢は大きく後れを取る。シャープは2011年にフランステレコムと提携したものの、販売している1モデルを今も新機種に切り替えていない。中国や東南アジアの一部での販売も少量にとどまる。

 パナソニックも欧州でのスマホ販売の撤退を表明。ソニーが自社開発の最新機種「エクスペリア」シリーズで気を吐くが、販売量や技術で中国メーカーに追い上げられ、米調査会社IDCによると、2012年10~12月のスマホのメーカー別世界シェアで上位5社に食い込めなかった。

 ただ、らくらくスマホで富士通は販売数量だけを追わない。「端末を売るだけのやり方はやめ、スマホに換えることの意義も提案する」(大谷氏)。

 フランスでは高齢者向けのSNSや写真をスマホ利用者などで共有するソフト、SNSを人が常時監視するサービスを端末とセットで売る。日本と仏のSNSの連携といったサービスの拡充を順次進めていく構えだ。

 日本メーカー 海外再浮上の試金石に

  サービスの充実を図る富士通の戦略は「薄利で何百万台売らないと黒字にならない無謀なビジネスの繰り返し」(大手電機メーカー幹部)だった日本勢の商法から脱却を目指す一環だ。海外向けらくらくスマホでは、搭載する米グーグルのOS(基本ソフト)「アンドロイド」にも手を加え、使いやすさを向上させるなど製品改良も重ねる。

 富士通は、らくらくスマホでブランドの知名度を高めた上で、「アローズ」など高機能スマホを海外で展開する青写真を描く。「価値を提案して利益を取るとともに、フランスで販売地域を限定しながら力をつけ、長期間をかけて海外を攻略する」(大谷氏)

 調査会社、ガートナー・ジャパンの佐藤篤郎アナリストは「世界でのシニア向け携帯電話の需要は底堅く、出荷台数の上積みを狙う富士通にとっても海外展開は欠かせない。欧州全体で1%程度のシェアをまず確保できればいい」とする。富士通の戦略の成否は、日本の携帯メーカーが海外で再浮上する試金石になりそうだ。(是永桂一)

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