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投資の機動力を迅速に ドコモなど相次ぎCVC設立
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2012年以降に設立された主なCVC 事業会社が自らベンチャーキャピタル(VC)を設立し、ファンドを通じて投資する「CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)」が浸透しつつある。CVCには投資先の発掘力を高めるほか、取締役会を経ずに投資を決定できる利点がある。これまではネット系企業中心だったが、通信や放送業界に広がり、独立系VCと協力する動きも目立つ。海外ベンチャーも含め投資案件も着実に増え、成果も実り始めた。
「事業会社は資金力があり、CVCを(ベンチャー投資の)有力なライバルとみなす向きもあったが、今はみんなパートナーと考えている」。日本ベンチャーキャピタル協会が11月24日に都内で開き、CVC担当者らが取り組み状況などを説明した「CVCフォーラム」。出席したVC関係者は終了後にそう語り、連携に意欲を示した。
フォーラムは昨年も行われたが、有志による勉強会だった。CVCの設立が増え、関心が高まる中で、協会の主催に“格上げ”されたという。
今年はNTTドコモやフジ・メディア・ホールディングス、TBSホールディングスが新たにファンドをたち上げた。中でもドコモのファンドは投資枠が100億円に達する。スマートフォン(高機能携帯電話)などIT(情報技術)の進歩で周辺業界との垣根が崩れる中、通信会社や放送会社は技術力や情報収集力の強化を急ぐ。投資の意思決定を迅速にできるCVCは魅力的だ。
昨年2月に投資枠50億円、運用期間10年のファンドを創設したKDDIは、今年の投資先が11社と前年の6社を大幅に上回り、早くも投資枠のうち30億円以上を使い切った。投資先には海外の5社が含まれる。
KDDIの高橋誠執行役員専務は「ファンド創設で投資の機動力が高まった」と話す。
投資先の一社で交流サイトで知り合った相手に贈り物ができるサービスを手がけるギフティ(東京都品川区)は、大手外食チェーンのサービス券を扱う交渉でKDDIの支援を受けている。太田睦社長は「近く正式に決まりそうだ。信用力あるKDDIの支援はありがたい」と歓迎する。
調査会社のジャパンベンチャーリサーチ(JVR)によると、未公開企業に対するVCの投資は1~9月で240億円以上と前年同期を33%上回り、上位30社の半分以上をCVCが占めた。事業会社の直接投資は7%減の104億円と停滞。CVCの積極投資が際立つ。JVRの北村彰代表は「現場主導で案件が増えにくい直接投資に対し、組織的に投資するCVCは速い」と指摘する。
KDDIの場合、単独ではなく、独立系VCのグローバル・ブレインとファンドを共同運営している。
VCが純投資を目的とするのに対し、CVCは自社と投資先の事業シナジー(相乗効果)も狙う。ただ、事業会社には技術を評価する力や豊富な資金はあっても、ファンドの運用ノウハウは不足する。
CVCの浸透や株高で、ベンチャー企業の“値段”が高騰。VCは企業価値を正確に測る目利きの役割も求められており、両者が補完関係を築く例は今後も増えそうだ。
米国では1960年代からCVCが浸透。半導体大手のインテルが出資するCVCは代表的な成功例だ。これに対し、日本ではネット系以外に電機大手も設立に走った時期があったが、大きな成果を挙げているとは言い難い。VCとCVCがうまく連携できれば、こうした状況に風穴を開ける可能性がある。
もっとも、KDDIの高橋執行役員専務は「それよりシナジーという言葉に落とし穴がある。利に走りすぎれば必ず失敗する」と課題を指摘する。
KDDIは過去の反省をふまえ、投資案件ごとの収益目標の設定をやめた。「手厚く支援してくれるが、経営の自由は奪わない」(ギフティの太田社長)との評判が確立。今は週に10社以上検討する投資案件の大半が持ち込みという。
ドコモが設立したCVCの安元淳シニア・ディレクターも「『求む、好敵手』の姿勢で(投資先を)探している」と、自社との競合をも容認する姿勢を強調する。
投資成功には仕組みだけでなく、中長期的な視点で投資先の育成に取り組む「度量の広さ」も求められている。(井田通人)