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【書評】『アフリカッ!』松村美香著

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【書評】『アフリカッ!』松村美香著

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「アフリカッ!」松村美香著(中央口論新社・1785円)  現実のなかで成長する若者

 豊かな天然資源があり、新たな成長市場としても注目されるアフリカ。安倍晋三首相が開発支援と経済協力の拡大をめざして3カ国を歴訪したのは、つい先日のことだ。巨額の資金を投入して著しい進出を続ける中国との違いを示しつつ、日本は独自の存在感を高めることができるのか。

 本書は、エンターテインメントの醍醐味(だいごみ)を味わいながらアフリカ・ビジネスの可能性を掘り下げることができる小説だ。

 主人公は、五稜商事のシステム部に所属していた28歳の村上大輝。海外勤務を嘱望していた彼の異動先は「アフリカ開発部」であった。大輝が自分に課したミッションは、この巨大な大地に日本の製品を送り込んで人々の生活を向上させること、日本の技術でその地を困窮から救うこと。しかし、その日暮らしに近い生活をしている人々を相手に、いったいどのようなビジネスがあり得るのか? 先進国の製品は高くて買えない。技術が複雑すぎて、メンテナンスが難しい。壊れると、スペアパーツを入手するのは簡単ではない。

何年もアフリカで粘り強く仕事をしてきた日本人の専門家からそのような話を聞かされると、くじけてしまいそうになる。もはや物など売っても利益にならないというナイロビ支店長。立ちはだかる高い壁を認識しながらも、懸命にビジネスのタネを探し続ける大輝。心のノートに刻まれていく言葉の数々。大自然、観光、携帯電話、情報システム、お洒落(しゃれ)…。ところが、感染症にかかり、治療のためロンドンに行くことに。そこで、「物じゃない何か」と出合う。そして、ついに周囲を驚かせるような斬新なアイデアが! 現地のことなどまったく分かっていなかった若者が少しずつ、アフリカの現実のなかでたくましく成長していく。

 頭でっかちで行動が伴わない日本人が多いなか、将来を託せる前向きな若者の姿を大輝に投影させているのか!

 著者の松村は現役の国際開発コンサルタント。現場で得られた多くのディテールが縦横にちりばめられ、一大絵巻に仕立てあげられている。(中央公論新社・1785円)

 評・堺憲一(東京経済大教授)

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