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書評
【書評倶楽部】書評サイト「HONZ」代表・成毛眞 『おざわせんせい』
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成毛眞氏(瀧誠四郎撮影)
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本書は広告代理店の博報堂が、社内用に出版した『先達クリエイターの名言集』から、小沢正光さんの言葉だけを抽出したものだ。その小沢さんとは1951年生まれの広告マン。現在は博報堂顧問兼チーフプラニングオフィサーを務めている。
小沢さんが発した言葉は一刀両断にして一撃必殺。無茶な仕事ぶりで知られる広告代理店でも稀有(けう)な存在だという。その言葉とはたとえば、「仕事の文句を言うヒマがあったら仕事しろ」「言葉で殺されたいか? それとも、拳で殺されたいか?」「俺は、この人生、反省しているが、後悔はしていない」。
まさに常在戦場を旨とするような広告マンのように見える。しかし、本書の魅力はそこだけではない。知られざる広告代理店の社内を垣間見ることができるのだ。
疲れと緊張でプレゼン本番中に気を失うクリエイティブ。横暴な上司にキレて携帯電話を3台折った部下。蕁麻疹(じんましん)になった部下に一人前になったと喜ぶ上司。それどころか小沢さんは部下の結婚式で「制作者は、少し不幸なほうがいいものを作ります」などスピーチをするのだ。
これでは博報堂がとんでもない会社に見えるのだが、不思議にそうではない。ビジネスマンの人生と仕事、責任と努力に感動し、仲間と情熱、愛と誇りまでも感じることができる、じつに不思議な本に仕上がっているのだ。
編集はもちろん博報堂の社員たちだから、この程度の制作物はお手のものなのかもしれない。博報堂のクリエイティブ力のショーケースかもしれない。それでもなお、本書はあらゆる会社の上司にとっても、部下にとっても、新人にとっても良い読み物であることに間違いはないだろう
明るく元気に一所懸命仕事をすることの幸せが伝わってくる本なのだ。(集英社インターナショナル・本体1300円+税)
なるけ・まこと 元マイクロソフト日本法人社長。インスパイア取締役ファウンダー。著書に『本は10冊同時に読め!』など。