SankeiBiz for mobile

【書評】『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』

ニュースカテゴリ:暮らしの書評

【書評】『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』

更新

『年収は「住むところ」で決まる』  □エンリコ・モレッティ著、安田洋●解説、池村千秋訳

 ■高学歴・高スキル集積が波及

 「年収は住むところで決まる」のではなく、「住むところは年収で決まる」のではないか。確かに普通はそうなのですが、このタイトルの因果関係が間違っているわけではありません。

 本書はアメリカ在住のイタリア人経済学者が書いたもので、都市間格差を雇用とイノベーションという切り口で分析しています。かつて自動車産業で栄えたデトロイト市の凋落(ちょうらく)ぶりがしばしば報道されていますが、1970年代のシアトルがまさに同じ状況で「絶望の町」と言われていました。製造業の空洞化にともなって雇用が年々流出していたのです。しかし79年にマイクロソフトの本社が移転してきたことで「希望の町」への大きな一歩を踏み出します。

 この強力なイノベーション企業が優秀なエンジニアを惹(ひ)きつけ、その集積が新たなハイテク企業を呼び込み、また、成功した人間が新たに起業するという好循環によって高学歴・高収入の働き手が増えました。さらに彼らのニーズに対応するためのライフスタイル産業が新たな雇用を生みました。

 本書によれば、イノベーション系の雇用1件に対し、サービス系の雇用は5件生まれるといいます。この雇用創出効果は製造業の3倍以上。高学歴・高スキルの人材が集まると給与水準が上がり、それが地域全体に波及します。頭脳集積都市の高卒者は頭脳流出都市の大卒者よりも年収が高いということを本書はデータで示しています。というわけで、年収は住むところで決まるのです。(プレジデント社・本体2000円+税)

 プレジデント社 書籍編集部 中嶋愛

●=示へんに右

ランキング