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【おっぱいのチカラ】(5)消えた「断乳」…自然に離れる「卒乳」が主流に

ニュースカテゴリ:暮らしの生活

【おっぱいのチカラ】(5)消えた「断乳」…自然に離れる「卒乳」が主流に

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現在使われている母子健康手帳の一つ。1歳と1歳半で、母乳を飲んでいるか否かを確認する欄があるだけだ  「タイミングを探っているけれど、その日は突然来るかもしれません」

 大阪市城東区のカメラマン、馬場畑彩さん(36)は授乳をしながら、第2子の長女をいとおしそうに見つめた。もうすぐ5歳。3歳の妹と一緒におっぱいを飲み続けている。

 無理にやめない

 平成14年4月、母子健康手帳から1歳での「断乳」という言葉がなくなった。19年3月に厚生労働省が出した「授乳・離乳の支援ガイド」では「離乳の完了」は生後12~18カ月ごろとしつつ、「離乳の完了は、母乳または育児用ミルクを飲んでいない状態を意味するものではない」と記述。現在の母子健康手帳には、母乳を飲んでいるか否かを確認する欄があるだけだ。

 主流になりつつあるのは、1歳以降も無理に母乳をやめる必要はないとする考え方。長く母乳を飲んでいた子ほど認知能力が高く、成長してから生活習慣病のリスクが低下するという研究もあり、WHO(世界保健機関)は2歳以降まで母乳を継続することを推奨している。年齢にかかわらず、子供が自然におっぱいから離れるのを待つ「卒乳」が広がり始めた。

 母乳で育てたい母親の団体「ラ・レーチェ・リーグ日本」の参加者には、長く授乳を続ける人が多い。大阪府高槻市の同団体リーダー、勝田繭子さん(38)は「勧めているわけではないが、子供のニーズに応えているうちにそうなった人が多い」という。

 次の子を妊娠してもやめる必要はなく、馬場畑さんのように2人の子に同時期に授乳する「タンデム授乳」もよくみられる光景だ。ただ、妊娠中におなかの張りや出血があったり、母親の体重が減少したりしている場合は医師に相談することを勧めている。また、母親自身が授乳をつらく感じるなら、子供の気持ちも尊重しながら少しずつ離す場合もある。

 気持ちをくんで

 卒乳が広がる一方で、母親がリードして授乳をやめる選択もある。桶谷式母乳育児相談室では子供が1歳を過ぎて独り歩きしていることなどをめやすに、子供の気持ちをくみ取りながら日付をあらかじめ決定。子供に「これが最後のおっぱい」と説明してからたっぷりと授乳する。その後、マジックなどで乳房に顔の絵を描いて子供に見せ、儀式とすることもあるという。

 馬場畑さんは「お乳をあげることで、私も子供から安心や幸せな気持ちなどをもらっている。授乳する時間は心の栄養を交換する時間でもある。誰も飲まなくなったらさみしいですね」。

 ただ、授乳の終わりは育児の終わりではない。同団体リーダーで中学2年と小学4年の兄妹を母乳で育てた京都府京田辺市の中島千歌さん(44)は言う。

 「いろいろな形がありますが、お母さんが子供と自分にとって良いと考えた時期や方法が最善だと思います。おっぱいを通して必要なことに応えてもらえるという安心感が土台にあれば、親と子の良い関係は続いていくのです」

=おわり(加納裕子が担当しました)

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