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子供の「怒り」どう対処? 「日記・温度計」で自己感情を理解させる
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怒りの制御がテーマの親子教室では、怒った顔を風船に描いて可視化する=東京都港区(菅野昭子さん提供) 何かがあるとすぐに怒りだしてしまったり、物を投げたりしてしまう…。そんな感情のコントロールが難しくみえる子供にどう対処したらいいのか。日本アンガーマネジメント協会(東京都港区)のキッズインストラクタートレーナーで、子供への指導を行っている菅野昭子さんに聞いた。(日野稚子)
子供は言葉を覚えて「楽しい」「うれしい」と感情表現するようになるが、大人同様に正確に感情を認識できるようになるのは小学校低学年からだ。それまでは感情(気持ち)を自分の中に1つしか認識できず、複数の感情が別々に存在するとは思っていない。「自分がなぜ怒ってしまうのかを小学校2年生に考えてもらったら、『怒るのは空から降ってくる』と答えた。小学校低学年や未就学児では、周りの環境が自分を怒らせているから、どうにもならないものだと思っている」と菅野さんは指摘する。
例えば、遊びたいと思ったおもちゃを友達が貸してくれなかったり、大好きな菓子を自分が望む分だけ食べられなかったりして「周りに怒らされている」と感じる。怒りは子供にとって、目に見えない、えたいが知れないものだ。
怒りは第二次感情と呼ばれる感情で、寂しさや悲しさ、不安、空腹感や眠さなど、日々の生活のストレスや疲れといった、怒る原因となる第一次感情が隠れている。だが、「喜怒哀楽という言葉があるように、人間の感情の中で怒りは大切な感情の一つ」(菅野さん)なので怒りを抹殺する必要はない。「怒っては駄目」という指導ではなく、根底にある第一次感情に親子とも目を向けることが大切だ。
では、怒りにどのように対処すればいいのか。
最初に、「怒るのは悪いことではない」「怒ることを自分で決めている」-の2つを理解させよう。例えば、食べたい菓子を友達が食べたという状況を想定させる。「他の物を食べるという選択肢があり、それは怒らなくても実行できる。だから怒るタイミングは自分で決めていて、怒らないこともできる。それが分かれば腑に落ちて納得する」と菅野さん。
どんな時に自分が怒るのかを子供自身が知るのも重要だ。そのために、「怒り日記」や「怒りの温度計」を付けることを勧める。
「怒り日記」では、
「怒りの温度計」は平常時(0点)~怒り爆発(10点)の心境を、10段階で表す作業だ。感情には幅があり、どんな事柄でどの程度の怒りを感じるのかが分かる。未就学児なら「赤・黄・青」のように信号機表示に置き換えてもいい。親も子供と別に怒りの点数を付ける。
怒りを客観的にとらえることで感情的に怒ることは減るという。菅野さんも2人の娘の子育て中に実行し、「点数化することで親として子供に無駄に強く怒っていたことが分かった。怒りやすかった次女も落ち着いた」と話す。怒りの露出で希望がかなう事柄は、家庭の外ではほとんどない。「手を付けられない子供」と諦める前に、自己感情を理解させ、表現させてみることが肝心だ。
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学校や幼稚園など集団の中で周囲に当たり散らしたり、友達を突き飛ばしたりしてしまう。そんな子供への対処法は-。
まず、怒るときの約束を決めよう。菅野さんは
次に、怒る前兆となる体の変化を気づかせる。口が「へ」の字に曲がる、体が震える、頭が熱く感じたなど、怒り日記に書き添えさせると実感しやすい。
怒る前兆が出たときの対応方法で簡単なのは「6秒待つ」と「深呼吸」だ。いずれも反射的に起きる怒りから意識を避難させるためで、そこを越えると別の選択肢を考えられるようになる。心の中で6秒数えるのが難しい年齢なら、「心が落ち着く魔法の呪文を唱える」と教え、唱える言葉を親が授けよう。
怒っていい場面は「例えば、一生懸命描いた絵や大切な人をけなされたとき」と菅野さん。どうして怒っているのか「けなされて悲しい」など根底の感情を表現できるようになれば、無駄な怒りから解放され、子供も落ち着くという。