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DHA摂取へ、家庭や学校で食の見直し 給食の和食化、おやつ開発も
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魚など国産食材を使い、和食を中心とした給食で食育に取り組む=東京都杉並区の区立三谷小学校 子供の脳神経の発育を促すとされるDHA(ドコサヘキサエン酸)の摂取量を増やそうと、家庭や学校で、食を見直す動きが盛んだ。青魚などに多く含まれているため、給食の和食化を図る学校や、摂取しやすいおやつの開発など、あらゆる方策が進んでいる。(兼松康)
10月初旬。東京・杉並区の区立三谷小学校の給食時間。子供たちの机にはDHAを多く含むサンマの姿煮が並べられていた。
同校では、和食を通じた食育を行っており、和食を7割に増やし、国産の素材を使った給食を提供。取り組みはすでに6年目に入っている。
「調査したところ、家庭での和食文化が崩壊しているような面もあった」と話すのは、同校の山岸一良校長。特に朝食ではパン食が多い実態もあり、「小学校のうちから、基礎として和食教育をしっかり教え込む」という目標を掲げて食育に取り組んでいる。
同校の栄養担当で管理栄養士の江口敏幸教諭は「国産の食材を使うと、特に魚は季節の旬の物を使うようになる。季節感も出て、何がおいしい時期かを学べるようにもなる」と説明する。骨の取り方や食べ方の指導を含め、学校全体で取り組みが進み、食べ残しも減ったという。
同校は、和食を通じた生活リズム向上や社会性向上を研究テーマに掲げ、文部科学省のスーパー食育スクールにも指定。3年生以上が卵焼きの調理実習をするほか、児童自ら田植え、稲刈りをしたコメや、学校の大きな菜園で取れた野菜を給食に使うなど、幅広い取り組みを続けている。
「DHAは脳細胞の構築そのものを支える物質。特に成長期にはより大量のDHAを必要とする」と話すのは、小児科医の成田奈緒子文教大学教育学部教授。脳幹が本能的・原始的な情動をつかさどるのに対し、「身体に大事だから食べよう、どんなものでも栄養バランスよく食べようと思えるようになるには、大脳皮質や前頭葉がきちんと育つことが必要」と説明する。
味の素は今年4月、不足しがちなDHAをおやつ感覚で補える子供向けサプリメント「かしこいおやつDHA」を発売した。欧州食品安全機関が推奨する1日あたりのDHA摂取量250ミリグラムに対し、現在の3~12歳の日本人の平均DHA摂取量が約150ミリグラムと足りないため、3粒で100ミリグラムのDHAを補える。
料理研究家の小山浩子さんは、家庭で作れるDHA入りおやつのレシピを考案。缶詰のサンマのかば焼きをバナナやあずき、にんじんなどとともにパイ生地でまいて焼くだけで手軽にDHAを摂取できる「さんまのお魚パイ」など13種のレシピを考えた。
「DHA摂取には、魚を使えばいいが、生臭さがあり、子供に喜んで食べてもらうおやつのレシピの開発では何度も壁にぶち当たった」と小山さん。DHAはビタミンEとともに摂取すると吸収効果が高まることから、ナッツや緑黄色野菜もおやつに取り入れる工夫をした。年明けに発売予定の書籍で一部レシピを公開するほか、食育雑誌で来春から連載も予定しているという。
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DHA摂取など、食の見直しとともに、家庭での生活リズムも子供にとっては重要だ。
味の素が6月に行った調査では、自分で起きない、起こしても起きない子供が半数を超え、食べるよう促さないと朝食を食べない子供も28%に上ることが分かった。こうした生活リズムを自律できないことが子供たちの不安定な情動にもつながっているとみられる。
成田教授は「脳の発育にはDHAが必要だが、食べるだけでなく、寝ることも重要」と指摘する。早寝早起きで朝食を取るという生活のリズムを育てることが、家庭でできる第一歩としている。
不飽和脂肪酸のひとつで、ハマチ、サバ、イワシなどの青魚やマグロの脂肪に多く含まれる。人間の体内では生成することができない必須脂肪酸で、食品から摂取しなければならない。摂取すると脳の働きを活発にしたり、記憶力や学習能力を高める働きがあるとされる。