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社会
【伊豆大島】亡き妹へ ピアノの音色届け 二次災害の恐れ、2300人に退避勧告
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台風26号による土石流で甚大な被害が出た伊豆大島(東京都大島町)で10月19日、犠牲になった保育園理事長の自宅にあったピアノが瓦礫の中から発見され、集まった親族や友人らがピアノの伴奏で鎮魂を込めてゆかりの曲の数々を歌い上げた。歌声が空に響きわたると、すすり泣く声がもれ、新たな悲しみがこみ上げた。一方、大島町は19日、降雨による二次災害の恐れがあるとして、一部の住民約2300人に避難勧告を出した。警視庁と東京消防庁、自衛隊などは避難勧告を受け、1000人超の態勢で夜を徹して続けてきた捜索を中断。台風27号の接近も懸念されており、島が日常生活を取り戻すめどは見えてこない。
「あの子は音楽が好きだった。安らかに眠ってほしい」
土石流で亡くなった保育園理事長で元大島町議の清水和子さん(78)のピアノを演奏した姉、宮城満津代さん(80)はそう語った。
清水さんは(10月)16日未明、大島町元町3丁目の自宅ごと約20メートル流され、遺体で発見された。「何か残されていないか」。約3メートル近くも積まれた流木の中から見つかったのが、清水さんが生前愛用していたピアノだ。
泥がこびり付き、いくつかの音が出なくなっていた。しかし、宮城さんは、敬虔(けいけん)なクリスチャンだった清水さんにささげる賛美歌を、繰り返し弾いた。
宮城さんは「妹の死を受け入れるには時間がかかる」と話す。「でも、カーコばあばのことだから天国で楽しげに歌ってくれてるよ」。宮城さんの孫で、清水さんが実の孫のようにかわいがった伊藤空香さん(22)は、空を見上げてそうつぶやいた。
保育士だった清水さんは1999年の町議選に初当選し、3期12年町議を務め、児童教育や高齢者対策にも取り組んだ。18日夜には、島民の大半を教え子に持ち、「かーこ先生」と慕われた清水さんの葬儀前夜式が営まれ、会場の教会には入りきれないほどの人が参列した。
生涯独身で伊豆大島と子供が大好きだった清水さん。災害後に壊れた車の中から見つかったカメラには、大島の自然と子供の笑顔ばかりが写っていたという。園長の桜井真美さん(48)は前夜式で「いつも優しいまなざしで見守ってくれた。台風前日には園の収穫祭で子供たちと笑顔で食事をしていたのに」と語りかけた。遺影の前では何人もの園児や教え子がじっと立ち尽くし、姉の宮城さんは「せっかちな子だったけど、台風と一緒に逝ってしまわなくてもいいのに」と涙を浮かべていた。
19日に出された避難勧告の対象は、被害が大きかった島西部にある元町地区の約1900人と、北部の泉津地区の約400人。町は午後5時すぎ、防災無線で避難勧告の発表を伝えた。泉津地区には急斜面の道があり、沢に土砂が堆積していることから対象となった。
また、19日に新たに2人の死亡が確認され、死者は27人となった。うち20人の身元が判明。21人の安否が分かっていない。
気象庁は19日夕、大島町に大雨注意報を出し、土砂災害への注意も呼び掛けた。
安倍晋三首相(59)は悪天候のため、20日に予定していた現地視察を中止することにした。首相は、被災状況や行方不明者の捜索活動を視察し、川島理史(まさふみ)町長(61)と意見交換する予定だった。(SANKEI EXPRESS)
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