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都合いい論調 露の「2プラス2」報道
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11月2日に東京で行われた日本とロシアの初の外務・防衛閣僚協議(2プラス2)はロシアでも大きく報道されたが、その論調は日本とは異なる点が少なくなかった。日本では「日露が対中国牽制(けんせい)で思惑が一致」とした報道が多数あったが、国営ロシア通信などは対中牽制論を真っ向から否定。北東アジアで緊張が高まるなか、「ロシアこそが各国の間を取り持っている」などと自国を評価してみせた。また北方領土問題をめぐっては、「中国との対立が、日本をロシアに歩み寄らせている」などとする報道もあった。
「セルゲイ・ラブロフ外相(63)とセルゲイ・ショイグ国防相(58)の東京訪問はアジアの友好のための戦いだった」
ロシア通信は4日、そのようにロシアの役割を評価する分析記事を配信した。
記事は、2プラス2開催に先立ち日本の英字新聞が掲載した対中牽制論を主題にした記事に対し、「そのような見方は全く逆だ」と主張した。英字紙の記事は、中国と約4000キロに及ぶ国境線を持つロシアが中国の軍事力増強に懸念を抱いており、それがロシアが日本と関係を強化する背景にあると指摘していた。
ロシア通信は、英字紙の記事は「日本国内における、中国側につくか、中国に対抗する側につくか、という議論を反映したものだ」と指摘し、そのような見解はもっぱら日本特有のものであるとの見方を示している。
そしてロシアの立場についてはラブロフ外相が「われわれは原則として、誰かに対抗して誰かと友好を結ぶということは決してない。これはわれわれが外交で最も重視する点の一つだ。アジア太平洋地域を含め、どのような国も、(ロシアの外交によって)不快な思いにはさせない」と述べたことなどを挙げ、「(英字紙の記事の指摘は)全く真逆だ」と主張した。
さらに記事は「ロシアはこの状況で、アジアにおけるバランスを保つ役割を果たしている。とりわけ、日本に対しては中国だけでなく、ロシア、また他の国との対立に傾かないようにしているのだ」とまで述べている。
ロシア通信の記事は、人口が減少しているロシア極東地域への中国人の大量流入や、中国海軍によるオホーツク海への進出など、対中牽制論の論拠となっている中国の北方への影響力拡大については一切触れておらず、英字紙への十分な反論とは言い難い内容だ。
ロシア政府は外交の場では、中国の軍事圧力への懸念などについては一切言及しない姿勢を貫いている。中国との関係は経済的にも軍事的にもロシアにとり死活的に重要で、ロシア通信の報道も、その姿勢が反映されている可能性が高いと言えそうだ。
一方、今回の2プラス2は北方領土問題解決を目指す日本側の取り組みの一部であり、その動きが中国の存在により加速していると指摘する記事もあった。
大衆紙
「中国が(領土交渉の停滞という)手詰まりから脱する“手助け”をした」とし、日本は「中国の面前でぐらつくわけにはいかない」ために、「(領土問題で妥協して)何らかの共同開発について話が進んでいるだろう」とまで推測してみせた。ただ根拠となる情報は示してはいない。
日本研究で著名なモスクワ国立国際関係大学のドミトリー・ストレリツォフ教授は大学のホームページ上で発表した論文で、今回の2プラス2は「多くの基準において、2国間の通常の儀礼的な出来事という境界を乗り越え、国際政治においても重要な出来事となった」と評した。
各メディアの報道においても、日露間で初の開催となった2プラス2の重要性を評価する姿勢は共通しているが、その背景をめぐっては、ロシア側に都合の良い解釈をする傾向が目立っていた。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS)