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五輪開催を目指す世界遺産の街 ウクライナ・リビウ

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五輪開催を目指す世界遺産の街 ウクライナ・リビウ

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リビウ中心部の独立広場では、連日、欧州連合(EU)への加盟を求める若者たちが集まっていた=2013年12月5日、ウクライナ・リビウ州(佐々木正明撮影)  【Viva!ヨーロッパ】

 冬季五輪が行われたロシア南部ソチのメーンプレスセンターに、かつて、6メートルを超える華麗な跳躍を見せ、世界中の陸上ファンをとりこにした「鳥人」がさっそうと姿を表した。

 男子棒高跳び、屋外開催ではまだ6メートル14センチの世界記録を保持するセルゲイ・ブブカ氏(50)だ。現在、ウクライナ・オリンピック委員会会長を務める陸上界の“レジェンド”は集まった世界各国の報道陣を前に、ウクライナが誇る世界遺産の街の美しさを語り始めた。

 「鳥人」ブブカの訴え

 リビウ。ウクライナ西部、ポーランドとの国境に近い古都で、人口は約73万人。13世紀に建設され、バロック様式の教会や、石畳の歩道が保存されている歴史地区は、1993年に世界文化遺産に指定された。

 リビウは2022年の冬季五輪招致を目指している。そのプレゼンターを引き受けたブブカ氏は、ウクライナ初の五輪開催が、独立してまだ20年余のウクライナの名を世界中に広める起爆剤になると、ソチのメーンプレスセンターでアピールした。

 「五輪は社会を変革し、国を統一させる大きな機会になる」

 ウクライナでは国の将来をめぐって、政治的な混乱が続いている。歴史的にポーランドとの関係が深く、欧州統合派の拠点であるリビウでも連日、デモや集会が行われている。

 ブブカ氏はスポーツの力、そして、世界最大のスポーツの祭典が輝き放つ魅力が、親露派、親欧米派と真っ二つに分かれた国民の分断を収める特効薬になると訴えたのである。

 「欧州連合の一員に」

 会場には世界各国のメディアの腕利きの五輪担当特派員が集まっていた。ウクライナの英雄は、政治的な混乱が招致に与える影響についての質問が飛ぶと、きっぱりとこう答えた。

 「誰もが(デモなどで)自分の意見を表現する機会を持っている。ウクライナは独立してまもない民主国家だ。多くの課題はまもなく解決されるだろう」。ブブカ氏の言葉には、ソチで同じスラブ系の兄弟国ロシアの若者たちが味わったオリンピックの雰囲気を、自国の若者たちにも経験させてあげたいという親心がにじんでいた。

 昨年(2013年)12月、リビウを訪れた時のことだ。中心部の独立広場で、ウクライナの国旗をまとったり、顔に黄色と水色のウクライナカラーのペイントをした若者たちが、口々に国の将来について語ってくれた。

 「このチャンスを失いたくない。ウクライナに変革が訪れるまで声をあげ続ける」

 「ウクライナは、欧州連合(EU)の一員になるべきだ。そうすれば、政治家の汚職はなくなる」

 「欧州に近い立地条件が、リビウを発展させる大きな利点になる」

 随一のコーヒー街

 リビウは教育の街でもあり、人口の約2割の15万人が大学生。ほとんどの学校がゼネストに入り、学生が主体となってデモを企画していた。歴史があって、新進気鋭に富む街の雰囲気は、京都にも似通っている。

 中世の面影を残す歴史都市は、デモクラシーの息吹にあふれる若者の街でもあった。そこに、オリンピック開催地という要素が加われば、さらなる魅力が増すに違いない。

 もう一つ、知られざるリビウのトリビア。それは、ウクライナ随一のコーヒーの街であること。歴史は17世紀までさかのぼり、通りにはたくさんのおしゃれなコーヒー店がある。街を歩けば、コーヒー豆を煎った芳ばしい香りが漂ってくる。コーヒー好きにはたまらない。(佐々木正明、写真も/SANKEI EXPRESS

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