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【ウクライナ情勢】プーチン氏「冷戦後」に挑む 住民投票でクリミアを手中

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【ウクライナ情勢】プーチン氏「冷戦後」に挑む 住民投票でクリミアを手中

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 ロシアが実効支配するウクライナ南部クリミア半島で3月16日、欧米による制裁の警告を無視してロシア編入の是非を問う住民投票が行われた。ロシア系住民が約6割を占めるクリミアで、「編入」が賛成多数で承認されるのは確実な情勢。投票結果を受けてウラジーミル・プーチン露大統領(61)が直ちに編入手続きに動くかどうかが次の焦点となるが、親露派政権が崩壊した2月下旬のウクライナ政変がこうした事態まで急展開した背景には、プーチン氏がこの機に乗じ、東西冷戦終結後の旧ソ連地域に形成された秩序を抜本的に覆そうとしていることがある。

 ウクライナ政変を逆手に

 投票(有権者約180万人)はクリミア半島にあるクリミア自治共和国と特別市セバストポリで実施され、(1)ロシアに編入されるか(2)ウクライナにとどまるが、より強力な自治権を定めた1992年の独自憲法に戻るか-の二者択一。編入の是非を問うと言いながら、現状維持は選択できない「お手盛り」の住民投票だ。ウクライナ系住民(約25%)や先住民族クリミア・タタール人(約13%)の間にはボイコットの動きも出ている。

 投票は16日午後8時(日本時間17日午前3時)に締め切られ、選挙管理委員会は16日夜に最初の暫定結果を発表する予定。投票に先立ち、国連安全保障理事会は15日午前(日本時間16日未明)、住民投票を「無効」とする決議案を採決したが、ロシアが拒否権を行使、否決された。中国は棄権した。

 自治共和国とセバストポリ市は投票結果を受け、直ちにロシア編入手続きを行う方針。ロシア側も「住民投票の結果を尊重する」(ラブロフ外相)としており、早ければ月内にもロシアへの編入が完了するとの見方も出ている。

 住民投票の発端は2月22日、ウクライナの首都キエフでの大規模デモによってヤヌコビッチ政権が崩壊し、親欧米派が実権を握ったことだ。ロシアが威信をかけて主催したソチ冬季五輪が成功裏に閉幕する実に前日のことであり、政権には大きな衝撃だったに違いない。だが、プーチン氏は状況を逆手に取った。27日以降はロシア部隊と強く疑われる武装勢力がクリミア中枢を次々と掌握し、この中で樹立された地元の親露派政権が住民投票を決めた。ロシアが早期の併合には動かないとしても、クリミアがロシアの実効支配下にとどまるのは確実だ。

 大きな代償伴う可能性

 旧ソ連国家保安委員会(KGB)のスパイとして東独に勤務していた1989年、「ベルリンの壁」崩壊に直面したプーチン氏は、旧東側陣営が解体する悲哀を身をもって体験。欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)が東欧やバルト諸国に拡大し、旧ソ連諸国にも影響力を及ぼす事態を苦々しく思っていた。そこへプーチン氏が欧米諸国の関与を疑う政変がウクライナで起き、行動を起こしたというわけだ。

 ウクライナで親欧米政権が固定化すれば、ロシアが死活的に重要と考えるクリミア半島南端の黒海艦隊駐留までが脅かされる。ピョートル大帝やクリミアを併合した女帝エカテリーナ2世を敬愛するプーチン氏は、今回の政変で帝国主義への共感を発露させ、一気に攻勢に出た。だが、欧米の対露制裁が本格化すれば、ただでさえ停滞が鮮明なロシア経済への打撃は必至だ。

 プーチン政権の行動が、中長期的に重大な代償を伴うものとなる可能性は決して低くない。(SANKEI EXPRESS

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