ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
社会
猪瀬前知事 公選法違反で罰金50万円 選挙使用実体なし 苦肉の「着地点」
更新
公職選挙法違反罪で略式起訴され、記者会見で頭を下げる猪瀬直樹前東京都知事=2014年3月28日午後、東京都千代田区(蔵賢斗撮影) 東京都の猪瀬直樹前知事(67)が医療法人徳洲会(とくしゅうかい)グループ側から5000万円を受け取った問題で、東京地検特捜部は3月28日、公職選挙法違反罪(収支報告書の不記載)で、猪瀬氏を略式起訴した。東京簡裁は28日、罰金50万円の略式命令を出し、猪瀬氏は即日納付した。猪瀬氏は今後5年間、公民権が停止される。都知事経験者が公選法違反罪で立件されたのは初めて。
猪瀬氏は28日、都内で開いた会見で「けじめをつけたいと考え、処罰を受け入れた」とカメラのフラッシュを浴びながら深々と頭を下げた。過去の記者会見では「選挙資金ではないと断言できる」と強弁していた猪瀬氏だが、この日は「5000万円は選挙で使う可能性があり、選挙資金という側面があった。自分がそのようなことをするはずがないというおごりがあった」と謝罪した。
起訴状などによると、猪瀬氏は2012年11月20日ごろ、徳田毅(とくだ・たけし)前衆院議員(42)を通じ、グループ創設者の徳田虎雄元衆院議員(76)から選挙資金として5000万円を受領。実際の総収入額は8050万円だったにもかかわらず、都知事選の選挙運動費用収支報告書には総収入3050万円としか記載しなかったとされる。
特捜部は5000万円が選挙に使われた形跡がなく、辞職により既に社会的制裁を受けていることなどを考慮して、公判請求は見送って罰金刑が相当と判断した。公選法違反罪(明細書提出義務違反)と、政治資金規正法違反罪(寄付の量的制限違反)は不起訴処分(嫌疑不十分)とした。
大学教授らが猪瀬氏への告発状を提出し、特捜部は今年1月に受理。猪瀬氏の個人事務所を家宅捜索するなど捜査を進めていた。
≪選挙使用実体なし 苦肉の「着地点」≫
東京地検特捜部は3月28日、猪瀬直樹前都知事を略式起訴した。捜査の最大の焦点は猪瀬氏が「個人的なもの」と強調した借り入れの趣旨。選挙運動に使用された実体はなく、捜査は不起訴も視野に進んだ。検察内部で「不起訴では世間の反発を招きかねない」との判断も働く中、“着地点”として見つけた結論が略式起訴だった。
「5000万円が使用された形跡が見つからない。事件にすることは難しい」
大学教授らが提出した告発状を東京地検特捜部が1月7日に受理した直後、検察幹部はつぶやいた。
選挙直前というタイミングから、「資金提供が選挙目的ということは子供でも推察できる」(検察幹部)。だが、ネックとなったのは、5000万円が使用された事実がないことだった。
出納責任者や末端の運動員から聴取を行ったが、選挙運動費用などの資金は、ほぼ選挙運動資金収支報告書に記載された枠内で収まっていた。猪瀬氏が徳洲会(とくしゅうかい)側に返却した5000万円の札束も押収したが、使用された形跡はなかった。
「公選法は公正な選挙を行うための法律であり、立件には具体的に公的な選挙を害したという実体が必要だ」(法務省幹部)
猪瀬氏は当初から、検察内部では不起訴とする案も浮上。ただ、検察内部には「世間的に選挙目的での借り入れだったことは明白だ。それにもかかわらず立件しないことは世論の反発を招く」(幹部)との懸念もあった。また、不起訴では検察審査会で捜査が指弾されかねない恐れもあった。
そんな中、5000万円を提供した徳洲会創設者の徳田(とくだ)虎雄元衆院議員や徳田毅(たけし)前衆院議員が「選挙目的のつもりで貸した」という趣旨の説明を始め、3月に入ると、猪瀬氏側も選挙資金であることを争わない姿勢を示し始めた。「もし正式に起訴された場合、事件が長期化する。猪瀬氏側もそれは避けたい意向があった」(猪瀬氏に近い関係者)
こうした情勢が勘案された末の略式起訴。OBを中心に検察関係者は異口同音に「かつてのイケイケの特捜部なら身柄(逮捕)になっている可能性はあった」と話す。
ある特捜経験者は「大阪地検の証拠改竄(かいざん)事件以降の慎重さが求められる特捜検察を象徴した事件だ。検察は今も“リハビリ”が続いているという印象だ」と振り返った。(SANKEI EXPRESS)