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見えぬ未来に不安「でも前を向く」 伊豆大島土石流災害 あす半年

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見えぬ未来に不安「でも前を向く」 伊豆大島土石流災害 あす半年

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土石流で大きな被害に遭い、家を失った被災者らが住む仮設住宅=2014年4月14日午後、東京都大島町(蔵賢斗撮影)  39人が死亡・行方不明となった昨年(2013年)10月の台風26号による伊豆大島(東京都大島町)の土石流災害は、4月16日で半年を迎える。町は、災害を教訓に大雨における独自の避難指示基準策定や防災対応の専用職員を配置するなど対策を進める。ただ、住宅や店舗の移転など復興計画はまとまっておらず、被災地区には今も更地が広がる。「この先どうなるのか不安。でも前を向いて行く」。被災者らは不安も口にするが、徐々に復興に向けて歩み始めている。

 家族分断の懸念

 「部屋が狭く、自宅に人を迎えることもできない…」。町中心部の元町地区で、家族経営する民宿と自宅が半壊した市村よし子さん(67)は、廃校となった小学校校庭の仮設住宅でため息を漏らした。

 6畳一間の1人暮らし用の仮住まいは、家具を置いたら布団を敷くのもやっと。以前は島を出た娘たちや孫、親類らが頻繁に訪ねてきてくれたが、泊めることはできない。「長引くと、足が途絶えちゃうかもしれないよね」。市村さんは、孫らと疎遠になることを懸念する。

 ただ、元の自宅に戻ったとしても手放しでは喜べない。土砂が濁流とともに生活をのみ込んだ沢が、近くにある。「元町に帰りたい。でも、あの時の恐ろしさは忘れられない」。複雑な心境をのぞかせる。

 同居していた長男は、民宿の再建に向け努力を続けている。「近くの公営住宅に住んで、民宿が忙しいときだけ手伝いに行こうと思う」。災害は家族の分断も生みかねない。

 見えない未来に不安を抱える被災者らも多い。仮設住宅の入居期限は2年で2016年1月には、自宅の再建や公営住宅の入居を決断しなければならない。

 町は砂防ダムの拡張工事などの計画は進めているが、工事に伴う住宅や店舗の移転対象などは定まっていない。元町地区の自宅が全壊し、仮設住宅で夫と暮らす会社員の須田由美さん(46)は「元の場所で住めるのか、住めないのか。早く結論を出してほしい」と訴える。

 役所に頼ってばかりでは…

 それでも前を見据える被災者らもいる。元町地区の自宅が壊れた無職の藤井勝夫さん(87)は、妻のセンさん(86)と公営住宅への入居の希望を決めた。

 雨が降る度に気が重くなり、自宅のあった場所には立ち寄らないようにしている。今年3月には自宅を解体した。「もう年なので、安心して落ち着ける環境で静かに暮らしたいです」。藤井さんは語る。

 がれきが今も残る砂浜で毎日1時間ほど清掃作業をしている津野忍さん(67)も、不安を抱えながら模索を続ける。

 元町地区の自宅は半壊して修復したが、隣の長男宅は全壊し再建できるかも決まっていない。安全という保証もなく、雨音が聞こえる度におびえる日々が続き、今も精神安定剤を手放せない。

 被災当初から長く他人を避けるような日々が続いていたが、先月(3月)には、ようやく主宰していた書道や朗読の教室を再開。日課のがれき拾いも、これからも続けるという。「役所に頼ってばかりでは仕方がない。自分たちの町。できることから始め、みんなで笑顔になりたい」

 ≪町独自の対応基準策定 連絡体勢強化も≫

 災害時に避難勧告が出されなかった反省を踏まえ、大島町は昨年(2013年)12月、土砂災害警戒情報が出された場合に避難指示や避難勧告を出すことなどを定めた独自の基準を策定した。今月(4月)からは総務課に1人だけだった防災係を3人体制の「防災対策室」に格上げし、連絡態勢強化を図っている。

 新基準は対象地域を「特別な警戒を要する地域」と「その他の警戒を要する地域」に分け、段階に応じて町の対応を細かく規定。大雨注意報が出た場合、両地域で注意喚起の防災無線を放送する。大雨警報が出され、実際に強い雨が降っている場合などは特別警戒地域に避難勧告を出し、その他の地域では高齢者や障害者ら災害時要援護者への支援を始める。

 町民が取るべき行動も段階別に示されており、防災対策室は「非常に厳格な基準」と話す。

 実際に今月(4月)3日、島内に大雨警報や土砂災害警戒情報が出された際は、初めて新基準にのっとって2地区計210世帯に避難指示・勧告を出した。国が4月8日に発表した市町村が避難勧告を出す際の新指針は、「空振り」を恐れないことを基本としており、それに沿った素早い対応だった。

 ただ、気象庁と東京都は土砂災害後、大島町での土砂災害警戒情報や大雨警報、注意報の発表基準を通常より引き下げており、梅雨や台風の時期に入れば避難勧告が何度も出される可能性がある。防災対策室は「『オオカミ少年』じゃないが、住民が慣れて避難しなくなってしまう恐れもある」と懸念している。(SANKEI EXPRESS

 ■伊豆大島土石流災害 昨年(2013年)10月16日未明、台風26号に伴う大雨により島西部の山肌が崩れ、大規模な土石流が発生した。土砂は、ふもとの大島町中心部にも達し、多くの民家などを押し流した。建物被害は399棟(うち住宅は153棟)に上り、36人が死亡、3人が行方不明となった。廃校となった小学校校庭に仮設住宅が建設され、現在も31世帯69人が暮らしている。この土石流災害をめぐっては、気象庁が大雨への警戒を呼びかけていたが、川島理史町長や副町長は出張で島外に出ていたがすぐに戻らず、避難勧告を出さなかったことなど、町の対応も問題視された。

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