SankeiBiz for mobile

皇居・宮殿 初の一般公開 「日本のすばらしさが凝縮」

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの社会

皇居・宮殿 初の一般公開 「日本のすばらしさが凝縮」

更新

 天皇陛下が80歳の傘寿(さんじゅ)を迎えられたことを記念して皇居・宮殿を初めて一般公開する「特別参観」が5月24、25の両日行われ、平均倍率573倍の抽選で選ばれた参観者が、国賓歓迎の宮中晩餐(ばんさん)会が開かれる「豊明殿(ほうめいでん)」などを見て回った。歌会始の儀、勲章親授式、各国要人との会見…。数々の宮中行事が繰り広げられる舞台を前に、参観者は感嘆の声を上げた。

 初日(5月)24日の特別参観は、3回に分けて行われた。午前9時45分、バスで宮殿前へ到着した初回参観者46人は、国内の賓客の玄関「北車寄(きたくるまよせ)」から玄関ホール「北溜(きただまり)」へ。靴カバーを履いてカーペットを踏みしめると、直径3メートル、高さ2.1メートルのシャンデリアが明るく参観者を迎えていた。3485のクリスタルガラスが使われ、重さ2.3トンとの宮内庁職員の説明に、早くも驚きの声が上がる。

 ここは「長和殿(ちょうわでん)」と呼ばれる棟で、南北約160メートルにわたって部屋が連なる。天皇誕生日と新年の一般参賀で陛下が皇族方と立たれる中央部のベランダ前に移動すると、国賓歓迎行事も行われる「東庭(とうてい)」(1万5000平方メートル)の石畳がガラス越しに見渡せる。

 宮殿で2番目に広い「春秋の間」(608平方メートル)に入ると、壁面には部屋名の由来となった「琵琶湖畔の春霞に立つ松」と「秋の霧の中の北山杉」が織物で描かれ、床に「日展三山(さんざん)」の一人である日本画家、杉山寧(やすし)作の「雲」を図案化したカーペットが広がる。神奈川県平塚市の原田百合子さん(72)は「建材といい調度品といい、日本のすばらしさが凝縮されている」と興奮気味だ。

 ≪みやびやかな「晩餐会」に思いはせ≫

 続いて、915平方メートルと宮殿で最も広く、晩餐会では最大158人を収容できる豊明殿(ほうめいでん)へ。32基のシャンデリアが輝き、特別にしつらえられたテーブルには、グラスや皿、フォーク、ナイフなど菊紋入りの食器が整然と並ぶ。晩餐会を思わせる“演出”に、参観者からはため息が漏れる。天皇、皇后両陛下や国賓の席順、部屋名が昔の宮中の饗宴の一つ「豊明節会(とよのあかりのせちえ)」にちなむことを説明されると、みやびさはさらに募る。

 さらに宮殿の奥へと進むと、特に重要な儀式・行事が行われる「正殿(せいでん)」だ。松竹梅にちなんだ部屋が並び、最も格式が高いとされる「松の間」(370平方メートル)は、新年祝賀の儀や歌会始の儀、首相や最高裁長官の親任式などに使われ、陛下の「即位の礼」も行われた。ケヤキの板張りの床に菊紋入り「御椅子(おいす)」が置かれたおごそかな部屋で、残念ながら廊下からの見学。職員の「宮内庁職員でも一部しか入れないんですよ」との説明にも納得だ。

 長和殿(ちょうわでん)につながる長さ74メートルの「回廊」を通り、表玄関にあたる「南車寄(みなみくるまよせ)」から東庭へ出て、約1時間の宮殿内参観は終了。東京都江東区の高橋陽子さん(72)は「建築や内装にも感動したが、両陛下が多くのお仕事をされていることにも驚いた」と話していた。

 (5月)24、25日の両日で計289人が参観した。10月にも行われる。(文:社会部 今村義丈/撮影:共同/SANKEI EXPRESS

 ■宮殿 1968(昭和43)年10月に皇居内に完成し、翌69年4月から使用を始めた。大屋根と柱、梁(はり)で構成される日本古来の建築美を生かして造られ、資材のほとんどは国産。鉄筋鉄骨造りの地上2階、地下1階、延べ面積は2万2949平方メートルで、正殿(せいでん)、豊明殿、連翠(れんすい)、長和殿、千草(ちぐさ)・千鳥(ちどり)の間など7つの棟で構成されている。

ランキング