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法務省最終案 司法取引導入、通信傍受の対象拡大 捜査の「新カード」 期待と課題

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法務省最終案 司法取引導入、通信傍受の対象拡大 捜査の「新カード」 期待と課題

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東京地方検察庁で開かれた法制審議会の特別部会に臨む、文集偽造事件で冤罪(えんざい)被害にあった厚労省の村木厚子事務次官(奥から2人目)ら=2014年6月30日午後、東京都千代田区(共同)  捜査と公判の改革を議論する法制審議会(法相の諮問機関)の特別部会が6月30日開かれ、法務省が最終とりまとめ案を提示した。取り調べの録音・録画(可視化)は、これまで検討されてきた通り、裁判員裁判対象事件と検察独自捜査事件について義務付ける。司法取引制度の導入や通信傍受対象事件の拡大の法制化など、新しい刑事司法制度の方向性が固まった。法制審が最終案を基に答申し、法務省は来年の通常国会に刑事訴訟法などの改正案を提出したい考え。

 可視化では、取調官が容疑者らから十分な供述を得られないと判断すれば実施しない、などの例外も設けられた。一定期間運用後の制度見直し規定も盛り込まれた。対象事件拡大の可否をめぐり捜査機関側委員と弁護士・有識者側委員の意見対立が続いており、次回の部会で再協議される。

 司法取引では、容疑者や被告らが他人の犯罪についての供述や証言、証拠提出を行う代わりに、検察官がその容疑者を不起訴にしたりすることに合意する制度などが法制化される。対象犯罪は、一定の経済関係犯罪や薬物銃器犯罪に限定される。通信傍受では組織性が疑われる窃盗、詐欺、児童ポルノ関係などにも対象犯罪が拡大。通信事業者の立ち会いも不要になる。

 また、最終取りまとめ案には(1)公判前整理手続きで、検察官が保管証拠の一覧表を被告や弁護人に交付(2)身柄を拘束された全容疑者らに国選弁護人を付ける-なども盛り込まれた。

 複雑化、巧妙化する現代の事件を解決するため、司法取引の導入や通信傍受の対象事件拡大など新たな“カード”を捜査機関が持つことで、社会の安全がこれまで以上に確保されるのでは、との期待は大きい。

 しかし、最終取りまとめ案では、司法取引を導入するに当たって、仲間からの報復リスクを負いながら事実解明に寄与した証人を保護するプログラムが設けられないなど、依然として課題も残っている。

 新捜査手法は捜査機関にとって強力な切り札となりうるが、そもそも取り調べ可視化などの刑事司法改革の議論が加熱したのは、大阪地検特捜部の押収資料改竄(かいざん)事件など不適切な捜査があったからだ。捜査当局は、適切な運用へのビジョンを早期に示すべきだ。

 ≪汚職事件や振り込め詐欺 解決の突破口に≫

 法制審議会の特別部会で法務省が最終取りまとめ案を示したことにより、司法取引制度の導入や通信傍受の対象事件拡大など、新捜査手法の導入が法制化される見通しとなった。取り調べの録音・録画(可視化)の範囲などでまだ議論が残るが、今後、刑事司法制度は大きく変わる。

 新しい捜査手法によって、取り調べなどはどう変わるのか。想定される場面のシミュレーションをしてみた。

 「昨年×月×日、料亭で建設業者と会食した席で、100万円入りの封筒を受け取りましたね」。警察署の取調室で向かい合った捜査員の口から発せられた内容に、A県B町の契約担当課長は耳を疑った。

 捜査が大きく進展したのは、贈賄側の業者が裁判での刑の軽減を条件に司法取引に応じ、事件の詳細を明らかにしていたからだ。物的証拠が少ない汚職事件では司法取引が有効とされるが、警察幹部は「自分の罪を軽減するため、虚偽の供述で無関係の他人を巻き込む危険性がつきまとう」と懸念しており、解決すべき問題はまだ多い。

 ××年×月の早朝、都心の高級マンションの玄関から出てきた若者を、警察の捜査員が取り囲んだ。捜査員が「警察だ」と声をかけると、男は逃げようとしたが取り押さえられた。男は首都圏の高齢者を中心に数十億円の被害が出ていた振り込め詐欺グループのトップ。数十人のメンバーとともに逮捕されグループは壊滅に追い込まれた。

 警察がトップの男を割り出すことができたのは、薬物事件や銃器事件などに限られていた関係者の電話の内容を聞き取る通信傍受が、詐欺事件の関係者にまで拡大された成果だった。ただ、法制審に参加している日弁連の委員は「通信傍受が無制限に拡大される恐れがある」と、乱用への懸念を示している。(SANKEI EXPRESS

 ■司法取引 検察官などが捜査に協力した容疑者や被告の処分を軽減する捜査手法。容疑者などから犯行の手口や共犯者などに関する重要な情報を得ることが期待できる。薬物などの組織犯罪や企業犯罪などでの適用を想定。英国、米国などが実施している。

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