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芥川賞 柴崎友香さん「春の庭」/直木賞 黒川博行さん「破門」
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受賞作を手に握手をする芥川賞の柴崎友香(ともか)さん(右)と直木賞受賞の黒川博行さん(左)=2014年7月17日、東京都千代田区(大橋純人撮影) 第151回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が7月17日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は柴崎友香(ともか)さん(40)の「春の庭」(「文学界」6月号)に、直木賞は黒川博行さん(65)の「破門」(KADOKAWA)に決まった。
柴崎さんは候補4回目、黒川さんは候補6回目での受賞。どちらも円熟の技術が評価された。
柴崎さんは大阪市生まれ。受賞作はかつて写真集に収められた東京・世田谷の一軒家に憧れ、隣のアパートに引っ越してきた女性と、同じ棟に住む男性の交流を描いた。
選考委員の高樹(たかぎ)のぶ子さんは「時間の厚みが色彩と一緒に揺らめいている。これまでの候補作の中で一番完成度、成熟度が高かった」と評した。
直木賞の黒川さんは愛媛県生まれ。高校の美術教師を経て作家となり、サントリーミステリー大賞や日本推理作家協会賞を受けた。受賞作は、暴力団員と建設コンサルタントの男性コンビが、持ち逃げされた金を取り戻そうと奔走する物語。
選考委員の伊集院静さんは「登場人物の心象を一切書いていないのに、これだけ読ませるのはすごい。ペーソスが感じられるようになった」と絶賛。作家本人についても「ここまで作品の質を落とさず書き続けた忍耐力、魂に敬意を表したい」と話した。
贈呈式は8月下旬、東京都内で開かれる。賞金は各100万円。
≪妻には頭上がらないけど社会の「悪」あぶり出す≫
「60歳を過ぎて青天の霹靂(へきれき)。うれしいです」。黒川博行さんは、どこかほっとしたような満面の笑みを浮かべた。初の候補入りから18年、6度目でついに直木賞を射止めた。
警察小説にハードボイルド。徹底した取材に基づくリアルな描写には定評がある。産廃業者や北朝鮮、宗教団体などをテーマに、一貫して社会の裏に潜む“悪”を描いてきた。受賞作は一癖も二癖もあるコンビが活躍する人気シリーズ。「ばくち好き」を自認するだけに、最もこだわったのは舞台のカジノだ。「商売の成り立ち、どう収益を上げているか…。そういうことが気になります。ま、今回は書くのに苦労してませんけど」
会話の妙手として知られ、軽妙な関西弁で繰り広げる主人公らの掛け合いにファンが多い。最も時間をかけて練り上げる部分であり、他の追随を許さない黒川作品の魅力でもある。エッセーの定番ネタ「よめはん」こと妻で日本画家の雅子さんには頭が上がらない。売れない時代も美術教師をしながら夫を支え、受賞作の装画も手がけた。「随分感謝しています。教師を辞めて勝手な仕事をしてきましたから」
デビューして30年余り。「運が強かったし、物書きとして恵まれていたと思う。受賞して何よりうれしいのは読者が増えて多くの人が読んでくれること」
新聞を隅から隅まで読み、リアルタイムで犯罪を描き出すセンスはピカイチ。次作はなんと「後妻業」だ。描く“ワル”には事欠かない。(山上直子/SANKEI EXPRESS)