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心躍らせる全てが詰まった3日間 沖野修也のフジロック観覧記

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心躍らせる全てが詰まった3日間 沖野修也のフジロック観覧記

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驚くべき声域の広さと圧倒的な歌唱力を武器に、ソウルフルなポップスを聞かせたケリス=2014年7月27日、新潟県南魚沼郡湯沢町(岡崎健志さん撮影、提供写真)  もはや日本の夏の風物詩と言っても過言ではないフジロックフェスティバル。18回目の開催となる今年、僕、沖野修也もDJとして8年ぶり2度目の出演を果たした。実際にこの希代の名物フェスに出る側として、そして、本紙連載を担当する音楽ライターとして僕なりの視点で今回のフジロックをリポートしてみたい。

 イベント要素満載

 なんと言ってもフジロックの魅力は、子供の頃に僕たちの心を躍らせた全てのエンターテインメントが体験できることだ。それは修学旅行であり、盆踊りであり、キャンプであり、オリエンテーリングであり、夜店であり、ハイキングであり、ピクニックであり、同窓会であり、ちょっとした登山ですらある。今や、小さな遊園地まであるのだ。その上で好きなアーティストのライブが見られるとしたら感動は果てしなく増幅されることだろう。不便だとか天候が悪いといった条件がマイナスに働くことなく多くの人々を魅了するのは、この童心に帰ることが許される3日間という非日常性が作用していると個人的には考えている。

 加えて、フジロックが提案するこだわりのブッキングは、お目当てでないアーティストを『フジロックのファン』に紹介する機能を内在している。今回僕が聴衆としてチェックした4アーティストはいずれも僕に新鮮な驚きを与えてくれた。

 先入観覆す女王の貫禄

 まずは、僕がプロデュースする渋谷のクラブ改めタマリバ、The Roomでもライブを行ってもらったことがあるオーサカ=モノレール。クラブやライブハウスで活動を続ける彼らは、巨大野外フェスでも存分に実力を発揮。ブラック・ミュージックになじみのない聴衆にも、激しいシャウトと関西弁を交えたユーモラスなMC、そして、親しみやすいダンスパフォーマンスでその存在感を強烈にアピールしていた。

 続いてチェックしたSBTRKT(サブトラクト)は、僕の友人でもあるアーロン・ジェロームの覆面ユニット。ダブ、ハウス、ベースミュージックをミックスした先鋭的な音楽であっても、集まったオーディエンスを大いに盛り上げていた。ポップスやロックに慣れ親しんだ人には難解と思わせる楽曲でも、過激な照明とボディーソニックなサウンドで多くの人に衝撃を与えたことだろう。フェスティバル慣れしたステージの構成力はなかなかのものであったと思う。

 そして、今回僕の目当てだったケリスの圧倒的なパフォーマンスには度肝を抜かれた。今年の4月に発売されたニューアルバムに反応しなかったことを僕は悔いた。ジャズ、ファンク、ハウス、ディスコまでを撹拌(かくはん)し、ソウルフルなポップスに昇華させたステージは、女王の称号を与えたくなるほど豪華で、同時にストイックであった。僕の先入観を覆した彼女のプロ魂に心を打たれた。

 思い込みを変えるという意味では、ジャック・ジョンソンのライブも非常に興味深かった。ケリスの出たホワイトステージから僕が出演予定のクリスタルパレスに移動する際に今年のヘッドライナーの一人でもある彼の演奏を少しだけ目にすることができた。ダンスミュージックではないけれど、多くの人に愛されるハートウォーミングなスタイルに時代のニーズを感じ取った。あまりにも有名過ぎて音楽的には僕と接点がないと今まで全くチェックしていなかったのだが、実はフォーキーなソウルやファンキーロックを踊れるジャズとともにプレーする僕の趣味と近からず遠からず…。工夫さえすれば、彼のファンに自分の音楽を伝えることもできるはずだと新たな表現のインスピレーションを得ることができた。

 新たな音楽に触れる機会も

 このように、支持者だけでなく、そこに集まった人々に新しい音楽に触れる機会を創出するフジロックの役割は、音楽シーンにおいて非常に重要だ。出演したことをアーティストや事務所が過度に利用することには僕は懐疑的だけれど、そのフィルターを通して提案されるラインアップは観覧に値するものだし、彼らがその時代を象徴するアーティストたちであることは間違いない。

 選んでいただいた方の期待を裏切らないよう、僕もフロアを沸かせると同時にサプライズを供給し、フジロックに自分なりに敬意を払った。イタリアのプログレにロシアのジャズ、そして1980年代に日本人がプロデュースしたスティービー・ワンダーのカバーまで(何と歌っていた本人が来日中で、僕のプレーを聴いてもらえるというミラクルが発生!)…。

 すでに来年の開催時期が発表され、ブッキングも始まっているという。2015年のフジロックは、どんなアーティストが僕たちを楽しませてくれるのだろうか? 出演者として呼ばれなくても、観客の一人として3度目の参加を試みたいと思う。(クリエイティブ・ディレクター、DJ 沖野修也/SANKEI EXPRESS

 ■おきの・しゅうや クリエイティブ・ディレクター/DJ/執筆家。著書に『DJ選曲術』や『クラブ・ジャズ入門』など。1月発売の『DESTINY replayed by ROOT SOUL』がiTunesダンス・チャート1位を獲得。今年、沖野修也DJ25周年を迎える。

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