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ママの「福職」探しを応援 仕事と育児、どちらも大事にしたい

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの社会

ママの「福職」探しを応援 仕事と育児、どちらも大事にしたい

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仕事のカンを取り戻すためのママインターンシップ=2014年2月5日(日本財団撮影)  【ソーシャルイノベーションの現場から】

 「仕事か育児かどちらかを選ぶのではなく、どっちも大事にしたい」

 沖縄県浦添市で7月22日に育児中のママや妊娠中のプレママ、地元企業のパパ社員が集まり、「ママカレッジ」が開催された。2歳の子供が会場を歩き回る中、参加したあるママが約20年間続けた仕事から離れたときの決意や子供への思い、将来への不安、復職への心境を語った。

 今回のママカレッジは、お茶会のように気軽に、子連れで参加できるワークショップ形式で行われた。同じ悩みや不安を抱えるママが互いの気持ちを話し合い、時には専門家のアドバイスを受け、復職後をリアルにシミュレーションできるようになっている。

 「もう一度、働き始めるときに、『社会性』『収入』『労働条件』『スキルアップ』『やりたいこと』の何を重視するかを決めましょう」。約1万人の復職相談にのってきた「りゅうせきビジネスサービス」の名嘉村裕子さん(44)は、こうアドバイスした。

 子供の成長視野に

 ママカレッジは群馬、東京、名古屋、大阪、広島、沖縄の各地で開催されている。

 今年3月、10万人以上が来場したママ向けイベント「Happy Mama Festa」で、「未来のあたり前な働き方」と題したアンケートが行われ、3173人が回答した。調査では、離職したママのうち約75%が「現在は育児のために仕事をしていないが、3年度には働いている」と回答。さらにそのうち約50%が「短時間・曜日限定の働き方」を、次いで「時間に融通がきく働き方」を希望していた。「正社員フルタイムの働き方」を選んだのは約20%にとどまった。

 また、「子育てしやすい職場環境で大切だと思う取り組み」という質問に、「子供の成長にあわせてフレックス・時短勤務ができる」が71%を占め、次いで「残業・休日出勤がない」が19%だった。

 アンケートからは、結婚・妊娠・出産といったライフステージを前提としたキャリア形成に対する意識が高まる一方で、子供の成長に合わせた段階的な働き方を目指す実態が浮かぶ。

 中小企業が主婦に注目

 今年2月から5月にかけて、森永製菓の会議室にママたちが集まった。商品コンセプトづくりや商品ラベルの開発に携わるためだ。

 主宰した森永製菓イノベーショングループの金丸美樹さん(38)は、自身も育休を経て職場復帰した経験を持つ。

 「育休中に感じた孤立感、社会との接点の少なさを解消するにはどうすればいいのか。企業の現実や制約を共有しながら当事者としてプロジェクトに関わる『ママインターンシップ制度』が、その解になると思った」。育児と仕事の間で葛藤しきたからこその発想だ。

 プロジェクトでママが集まったのは1回当たり1時間半、計4回だったが、時間的制約があったからこそ集中的にミーティングができ、制約をカバーする宿題にも積極的に取り組んでくれたという。

 民間の取り組みと同時に、国も動き始めている。結婚、妊娠、出産、介護などで一度仕事を辞めた女性が再び働き始るにあたり、中小企業での職場実習で準備ができる「中小企業新戦力発掘プロジェクト」だ。通称、“主婦インターンシップ事業”と呼ばれている。

 景気が上向く中、主婦ら潜在的な労働力に注目。人材不足に悩む企業が、実習期間に実習生の適正を見極めながら、自社雇用で戦力化を図るものだ。

 「仕事をしたいと思いながら、あれもダメ、これもダメと自分でハードルを設けてしまっていた。この制度は、そんな自分をやってみようかなという気にさせてくれた。止まっていたけれど、一歩踏み出して歩いてみると案外歩けて、そのまま歩こう、という気持ちになれた」

 幼稚園と小学校低学年の子供を持ち、仕事を離れて7年のブランクがある実習生のママは、こう言う。

 パートからのキャリアアップも

 実習生を受け入れたエクステリア・ガーデン資材の岡田商事の南史朗社長(65)は「仕事は時間でするものではないと思っている。8時間あれば、それに合わせて仕事をしてしまう。短時間だと濃縮しようと努力する。ママにはとても優秀な人が多く、スキルも持っている。当初は短時間でパートかもしれないが、子供の成長に合わせて、やがて正社員や幹部になってくれる可能性もある」と期待する。

 “ふく職”にはいろいろな形がある。育児や介護で一度離れた職場に復帰したり、子育てが落ち着いたタイミングで再び社会とかかわりを持つ「復職」。一つの組織や職業にとらわれず複数の仕事を同時に持つ「複職」。メーンの仕事である主職に加えて視野を広げるためにサブの仕事として従事する「副職」。誰もが100%ハッピーになれる「福職」を見つけられる社会であってほしい。(日本財団 経営支援グループ 高島友和/SANKEI EXPRESS

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