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【広島土砂崩れ】「もう怖い」「戻りたい」 被災者葛藤

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【広島土砂崩れ】「もう怖い」「戻りたい」 被災者葛藤

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投光器の明かりがつけられ、夜間も捜索活動を続ける自衛隊員や警察官。だが、断続的な雨で捜索はたびたび中断を余儀なくされた=2014年8月24日午後、広島県広島市安佐南区緑井(鴨川一也撮影)  ≪公営住宅入居受け付け開始≫

 政府は8月24日、土石流などの大規模災害発生に備え、対策の重点となる「警戒区域」を都道府県があらかじめ指定しやすくするため、土砂災害防止法を改正する方針を固めた。

 多数の死者・行方不明者を出した広島市の災害現場は、多くが警戒区域に指定されておらず、対策が遅れた可能性が指摘されている。広島市の土砂崩れは24日の捜索の結果、死者50人、行方不明38人になった。

 国土交通省によると、土砂災害の危険がある箇所は全国に52万5000あるとされているが、指定はその7割弱にとどまっており、大幅な引き上げを目指す。指定手続きの簡素化や、煩雑な調査や事務作業に当たる自治体への支援拡充などが課題となる。早ければ秋の臨時国会への提出を目指す。

 一方、広島市の災害現場では24日、断続的に雨が降り、二次災害の恐れから警察や消防、自衛隊の捜索活動が度々、中断された。がれき撤去などに当たるボランティア活動も中止となった。

 広島県警によると死者は24日、1人増えて50人となった。行方不明者は38人。県警は24日、死者のうち新たに安佐(あさ)南区で室屋敏夫さん(83)と藤井麻緒さん(53)、藤井さんの母、弥生さん(81)の身元を確認し、身元判明は41人となった。

 広島市によると、被害の大きい安佐南区緑井地区など4地区には約50万立方メートルの土砂が堆積。仮置き場としている公園だけでは足りず、市の埋め立て地にたまった土砂を移すことも検討している。

 ≪「もう怖い」「戻りたい」 被災者葛藤≫

 広島市の土砂災害の発生から5日目を迎えた8月24日、自宅が損壊した人を対象に公営住宅の入居受け付けが始まり、避難生活の長期化を見据えて住宅整備が本格化している。ただ、現場では依然40人近い安否不明者の捜索が続き、約1600人が避難生活を送る中で、被災者にはまだ先行きを見通す余裕はない。「もう怖くて戻れない」「できればまた住みたい」。慣れ親しんだ土地を追われた被災者の胸中は揺れている。

 故郷がなくなった

 「あの日を境に、僕の故郷そのものがなくなってしまった」。1家7人で避難生活を送る会社員、竹本康則さん(46)はため息をついた。広島市安佐南区の緑井地区で被災。約10年前に建て替えたばかりの自宅は土砂で1階が壊れ、隣近所の家もほとんど原形がない。

 「どれほど怖い土地に住んでいたか、やっと分かった。子供をここに縛ることはできない」。心は移住に傾いているが、転居資金はない。やむを得ず公営住宅への入居を申し込むという。「地区の復興に予算を投じても、戻らない人も大勢いる。個々の生活再建に回すべきだ」と行政に注文をつける。

 今回の災害では、公営住宅に加え、国家公務員宿舎や民間の賃貸住宅を借り上げて無償提供することも決定した。広島市の松井一実市長は24日の記者会見で、公営住宅などの提供で足りない場合、仮設住宅を建設する考えを示した。

 原則6カ月の制限

 ただ、市営住宅と県営住宅の無償提供は、原則6カ月とされている。緑井地区の男性(81)は「半年後に戻れても、この年でローンなんて」とうめいた。自宅は土石流で流れてきた別の住宅につぶされた。

 49年前に購入した土地。「一家4人の数え切れない思い出がある」。帰るか離れるか、まだ考える余裕がない。足が不自由なため、公営住宅の1階を希望したが、担当者から抽選の話をされた。「外れたら、どうすればいいんだ」と不安が尽きない。

 6カ月という期限に疑問を持つ人は多い。美容師、丸山淑子さん(71)の住まいは、被害が最も大きかった安佐南区八木の県営住宅。2階だったが、部屋の中はひざの高さまで泥水につかった。土砂が積もった1階では行方不明になった人もいる。「戻れるなら、ここに戻ってきたい。でも半年で元通りになるとは到底思えない」

 たとえ危険だろうと先祖伝来の地を離れないという被災者もいる。「江戸時代から受け継いできた土地だ」と話す八木地区の新宮勝哉さん(70)は、ライフラインが復旧すれば、自宅に帰るつもりだ。

 幸い建物にはほとんど被害がなかった。再崩壊の恐怖はあるが「そんなにすぐに、同じような災害は来ないだろう」と自らに言い聞かせるように話した。(SANKEI EXPRESS

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