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経済
【エコノナビ】ビジネス失敗モデルに学べ
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ハーバードビジネススクールなど世界の著名な経営大学院では企業経営の実例を調査研究し、学生の授業に活用している。しかし、企業の栄枯盛衰に合わせて内容をきちんと更新しているところは意外に少ないのではないか。
株式が未公開の場合は経営陣が入れ替わったり、資産売却がなされたりしても情報公開されず、成功体験だけがずっと教科書に載ったままである。
そんな企業の一つが日本人の元大手銀行マン、枋迫(とちさこ)篤昌氏が2003年に米国で創業した金融サービス会社「マイクロファイナンス・インターナショナル・コーポレーション(MFIC)」だ。
この会社は中南米などから米国に出稼ぎに来た移民らが本国に送金する場合の手数料を大幅に安くし、一方で途上国の小口金融機関に低利融資し、貧しい人がそこから融資を受けて起業しやすくする斬新な事業モデルを構築した。
KDDIが約2200万ドル出資して筆頭株主になったほか、世界銀行などの国際機関が高く評価し、世銀傘下の国際金融公社(IFC)などの公的機関も相次いで出資した。
しかし、関係者の話によれば、12年初頭には毎月約80万ドルの赤字が出て、資本金は約4000万ドルも毀損(きそん)してしまっていた。取締役会は12年1月に栃迫氏を解任した。経営悪化の直接の原因は一日50万件の送金処理が可能なシステムをつくったのに、送金依頼は日に2000から3000件しかなく、システムが過大だったからだという。
その後、新経営陣らは資産売却が妥当と判断し、13年6月までに米金融サービス会社、ヴィアメリカス(本社・メリーランド州)に630万ドルで売却した。日本人120人を含む旧MFICの株主180人にはそれに見合ったヴィアメリカス株が対価として交付され、MFICは解散した。
MFICの取締役会にはジェームズ・オー氏をはじめ金融の専門家らが顔をそろえていたが、なぜ経営破綻をくい止められなかったのか。栃迫氏はじめ旧経営陣らは口をつぐんでいるが、それこそ、ビジネススクールで学びたい失敗の教訓である。(気仙英郎/SANKEI EXPRESS)