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広島土砂崩れ1週間 死者66人、不明21人に 泥の中 家族や友の「思い出」捜して

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広島土砂崩れ1週間 死者66人、不明21人に 泥の中 家族や友の「思い出」捜して

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行方不明になっている親戚の思い出の品を探す人たち=2014年8月26日午後、広島県広島市安佐南区緑井(鴨川一也撮影)  局地的豪雨による広島市の土砂災害が発生してから、8月27日で1週間がたつ。(8月)26日までに死者は66人に上り、行方不明者は21人。住民約1500人は避難所での生活を強いられている。市の現地調査は進まず、被害の全容を把握できていない。警察と消防、自衛隊による3000人態勢の捜索が続くが、二次災害の恐れから度々中断し難航を極めており、長期化は必至だ。

 広島県警によると、死者のうち安佐南区(あさみなみく)八木の会社員、松枝隆弘さん(39)らの身元が確認され、これまでに53人の身元が判明した。

 安佐南、安佐北の両区では(8月)19日深夜から(8月)20日未明にかけ豪雨となり、安佐北区では(8月)20日午前1時半からの3時間に観測史上最大雨量の217.5ミリを記録。広範囲にわたり土砂崩れや土石流が発生した。

 行方不明者の自宅がある安佐南区の八木、緑井の両地区では、断続的に降る雨が捜索を阻んでいる。ぬかるむ足場に作業ははかどらず、流木や巨大な岩石が残り、重機が入れない地域も多い。

 市は難航する捜索に役立てるため、行方不明者の氏名や住所を公表。県警に相談ダイヤルを設けているが、不明者の無事が確認されたとの情報は寄せられていない。

 市災害対策本部によると、住宅被害は(8月)26日現在、全壊25戸、半壊39戸。しかし、救出活動が優先されて立ち入れない地域が多く、人手も足りないため、被害状況の確認が遅れている。実態はより深刻とみられる。

 市は避難生活の長期化を見据え、公営住宅などを無償提供するほか、仮設住宅の建設準備も進めている。

 松井一実市長(61)は(8月)26日の記者会見で、避難勧告が土砂災害の発生後になったことについて「避難勧告が早ければ被害が小さくなった可能性がある」と述べた。

 ≪泥の中 家族や友の「思い出」捜して≫

 広島市の土砂災害で、肉親を失った人や行方不明者の家族が、土砂やがれきをかき分け、思い出の品を捜している。古い写真やぬいぐるみ、仕事の足跡を示す名刺入れ…。災害は8月27日で発生から1週間。現実を受け止め、前を向く人。悲しみに立ちすくむ人。それぞれの思いが交錯している。

 スナップ写真、名刺入れ

 「あった、アルバムや。残ってる!」

 猛烈な土石流に襲われ、大きな被害が出た広島市安佐南区(あさみなみく)の八木3丁目。犠牲になった星野藤夫さん(79)の自宅跡で、泥の中から遺品を見つけた親族の一人が声を上げた。何十年も前の家族とのスナップ写真。「子供のころ、かわいがってくれたから」と長女の輝恵さん(51)が涙ぐんだ。

 藤夫さんは1965年ごろに建設会社「星野組」を創業した。「とことん、お客さんの立場に」が口癖だった。輝恵さんは新たに捜し当てた父の名刺入れを眺めるうちに、何もないところから会社を興した「努力の人」の後ろ姿を思い出した。「名刺をくれた人のところに、感謝の気持ちを伝えに行きたい」と話す。

 星野組は長男の保雄さん(54)が後を継いだ。藤夫さんが建てた自宅は流されてしまったが、基礎部分と車庫はしっかりと残った。「父の思いを胸に刻み、この会社を絶対に守る」と自ら重機を動かし、復旧作業に当たった。

 割れた窓からぬいぐるみ

 同じ八木3丁目のアパート1棟が丸ごと流失した現場。行方不明になった母娘の手がかりを求めて、土砂を掘り出す若い男性がいた。娘の20代女性と男性の妻が親友だという。「もし助からなかったら、妻は耐えられないだろう」と表情を曇らせる。

 土砂災害の当日、妻と2人で現場に向かったが、近づけなかった。「厳しいかもしれない」と思うが、妻はまだ現実を受け止められていない。捜索が進み、女性の車がある場所にもようやく行けるようになった。割れた窓から、女性が大切にしていた動物のぬいぐるみを拾い上げた。「動物と子供が大好きな優しい子だった」。ゆかりの品は女性の家族に渡したいという。(SANKEI EXPRESS

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